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東洋紡 稼ぐ力取り戻す

2024年05月15日 (水曜日)

 東洋紡は2025年度(26年3月期)を最終年度とする中期経営計画の前半が終了したことを受けて、後半2カ年のアクションプランを策定した。竹内郁夫社長は「交易条件の悪化に加え、事業ポートフォリオの位置付け変化によって当初想定していた“稼ぐ力”が低下している」と指摘。このため中計目標を一部修正し、後半2年間で要改善事業対策などに取り組むことで、“稼ぐ力”を取り戻す。

 現中計は最終年度となる25年度に売上高4500億円、営業利益350億円、純利益150億円を計画していたが、折り返し地点となる23年度は売上高こそ4143億円と計画に迫る数字となったが、営業利益90億円、純利益25億円となり、利益面は計画からの乖離(かいり)が大きい。

 これに対して竹内社長は「交易条件の悪化による限界利益率の低下と一部商材で市況低迷による販売数量減少が重なった」と要因を分析する。加えて重点拡大事業と位置付けていた包装用フィルムと、安定収益事業と位置付けていた不織布マテリアルの業績が市況悪化で低迷するなど事業ポートフォリオの位置付けが変化したことも大きい。

 このため中計最終年度の目標のうち営業利益は250億円、純利益も90億円に修正した上で、中計後半は“稼ぐ力”を取り戻すためのアクションプランを実行する。「価値に見合ったプライシングの徹底」「要改善事業対策」「経費の絞り込み、コストダウン」「成長投資の確実な回収」を基本方針に据える。

 特に包装用フィルムと不織布を要改善事業として位置付け直し、対策を進める。包装用フィルムは環境対応型製品や高付加価値製品へのシフトと拡販を進め、現在進めている新機台の早期本格稼働に取り組む。不織布は海外品との競争激化やコモディティー化が済んでいることで利益率が低下していることを受け、国内生産体制を見直し、社外での委託生産を拡大することで利益率の改善に取り組む。

 これまでフィルム、ライフサイエンス、環境・機能材の各事業で積極的な設備投資を進めてきた。「今後2年間で投資の成果を確実にマネタライズする」ことに取り組む。その上で資産効率を重視し、使用資本の圧縮に取り組む。

 当初計画では中計中に2400億円の投資を予定していたが、包装用フィルム関連を中心に実施を見送り、1800億円にとどめる。

 その上で次の成長ステージに向けた「“新”の創出」に取り組む。フィルム事業は高機能フィルムの増産・拡販と新規高機能フィルム開発を進める、ライフサイエンス分野はバイオ事業とメディカル事業の強化を進める。環境・機能材事業もエンプラや接着剤など樹脂・ケミカル事業とVOC回収装置やアクア膜、高機能ファイバーの拡大を進める。