特集 ANEX2024/台湾初開催、5月22~24日

2024年05月17日 (金曜日)

 アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」が台湾で初めて開催される。会期は5月22~24日、会場は台北南港展示館1館。ANEXは欧州の「INDEX」、米国の「IDEA」と並ぶ世界三大不織布展の一つで、3年に1度開催されてきた。台湾初開催の今回展でも世界を代表する不織布関連企業が出展する。日本不織布協会(ANNA)が初めてANNAパビリオンを設けたのも特徴で、日本企業24社が出展する。その他3社が単独ブースを構える。

〈初の日本パビリオン設置/単独含め27社出展〉

 ANEXはこれまで日本、中国・上海、韓国で開かれてきたが、台湾での開催は初めて。アジア不織布協会(ANFA)と台湾区不織布工業同業公會(TNFIA)が主催する。展示面積8千平方メートル、2万5千人の来場を見込む。メインテーマは「サステイナビリティー・イノベーティング」。

 台湾初開催について、ANFAの金井宏彰最高顧問(金井重要工業社長)は「日本、韓国、台湾、香港が手を挙げたが、台湾はこれまで開催していない上、積極的だった。TNFIAは会員企業を増やしており、現在ANFAに124社加盟するなど最多(日本は87社の2番目)。ANFAカンファレンスも過去3度開催実績があり、ANFA活動の貢献度が高いことも決め手になった」と明かす。

 新型コロナウイルス禍における不織布マスクの供給が評価され「台湾での不織布産業の位置付けが高まっている」ことも後押しになった。

 今回展は不織布の需要拡大が今後見込まれる東南アジアを意識した点も特徴的。技術開発とマーケティングを議論する「グローバル・ノンウーブンズ・サミット」でも各国報告のほか、東南アジアの不織布産業が話し合われる。

 次回開催国・地域は未定だが、既に中国、香港、韓国、インドが手を挙げているもようで、会期中に行うANFA会議で議論される。

〈試作したMBなど紹介/細繊度、高目付、混繊など/化繊ノズル製作所(J526)〉

 紡糸ノズルなど製造の化繊ノズル製作所(大阪市北区)は、高品質なメルトブローダイが不織布向けノズルの特徴の一つだ。高精度な加工公差(最大値と最小値の差)と品質管理への評価は高く、主要不織布メーカーに販売実績を持つ。自社に置く試験設備(600㍉幅=垂直方向吐出ダイ、250㍉幅=水平方向吐出ダイ)で、さまざまな原料使いが試作可能など顧客のR&Dにも積極的に取り組む。

 今回展では台湾の市場拡大に期待する一方、メルトブロー不織布(MB)導入を検討する企業へ訴求するため、自社試験設備で試作したMBやスパンボンド不織布(SB)を多数展示する。

 MB、SBサンプルではポリプロピレン使いをメインに細繊度、高目付品などを提案するほか、同一原料で繊度が異なるタイプ、粘度が異なるタイプ、さらに異なる原料を使用するタイプなどが製造できる混繊MBも紹介する。その他、MBやSB、混繊MB、試験設備のパネル展示も行う。

 2023年度(24年3月期)は新型コロナウイルス禍の不織布特需が終了し、生産設備の過剰と市場の飽和感から設備投資意欲が減退。同社の受注も低調だったが、24年度はフィルター向けや衛材向けMB用の受注回復に期待する一方、新市場開拓のため、海外からの引き合いを中心に新原料、新製造プロセスにも積極的にチャレンジするとしている。

〈大和紡績(K903)/環境配慮を発信/不織布製品まで一貫開発〉

 大和紡績グループは、国内唯一のレーヨン短繊維と、ポリプロピレン短繊維が中心の合成繊維を製造するとともに、これらを使用した、スパンレース不織布(SL)、エアスルータイプのサーマルボンド不織布(エアスルー不織布)の生産、さらに不織布製品企画まで一貫した開発を行う。

 今回展では環境に配慮した製品を発信する。環境対応型合繊とレーヨン短繊維製SLを展示。レーヨン短繊維はEUで「非プラスチック」と認定された環境に優しい繊維。これに機能を加えた製品を訴求する。

 「ミラクルファイバーKK―PL」は芯ポリ乳酸(PLA)、鞘ポリブチレンサクシネート(PBS)からなる生分解性の複合繊維。融点が異なり、バインダー繊維として使用できる。

 「アピタス」はレーヨン短繊維が主原料のSL。異なる繊維を積層・ブレンドしたり、意匠性の高い柄を付与した機能性の高い不織布だ。

 不織布の海外販売は中国でフェースマスク市場が低価格化する中で東南アジア、中東、欧州での化粧雑貨市場の拡大に期待。同時に低価格の使い捨て製品は今後、環境対応素材が鍵を握るとみる。その中で化粧雑貨市場の早い変化に対応し、マーケティング、差別化商品開発のスピードアップが重要とする。また、環境配慮の訴求は、コスト低減を課題に挙げる。

〈FFS(K405)/持続可能な取り組み提案/新製造工程などで顧客に利益〉

 台湾のフロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウェブ(FFS)は、世界の不織布メーカー大手である、ドイツ・フロイデンベルグ・パフォーマンス・マテリアルズの主要企業だ。

 FFSはカーペット、自動車、靴、建築資材、フィルターその他の産業資材向けにスパンボンド不織布(SB)を製造・販売する。日本(フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン)、中国、ベトナム、インドに販売拠点を置くなどアジア太平洋地域に販売網を敷く、同地域におけるSBの主要サプライヤーでもある。

 今後はグローバルでのネットワークを生かし、さまざまな商品開発を行いながら用途の拡大を計画する。

 今回のANEXは本社を置く台湾で初開催となるだけに、力を入れている。同展では環境問題に関心を持つ来場者向けに環境に優しい製品、革新的な製造工程、持続可能な取り組みを提案することで、これらを重視する専門家や潜在的な顧客との出会いに期待する。

 主な出品内容はポリエステルSB「ルトラデュール」、ポリエステル・ナイロンSB「コルバック」、3次元構造体「エンカ」など。

 各用途向けに再生ポリエステル製品を含めた同社の持続可能なソリューションや、顧客に利益をもたらす「Tack―Backプログラム」を紹介する。

〈環境配慮や機能を訴求/TAK(J717)〉

 東レグループは韓国子会社のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)が、単独出展し、衛材用と産業用の環境配慮型不織布や高機能不織布を訴求する。

 衛材用ではポリプロピレン(PP)とバイオポリエチレン複合紡糸のスパンボンド不織布(SB)、バイオナフサ製PPSB、再生PPSB、高強度低目付SMS(SBとメルトブロー不織布の複合品)、ソフトSB、穴あき3D加工SBを提案する。

 産業資材用は再生PPSBや静電性SMS、ポリエチレンフィルムとSB複合品、再生ポリエステル製ニードルパンチ不織布、抗菌性不織布、三角断面繊維使いによる不織布を訴求する。

 衛材分野は厳しい競争にあるため、同社は低目付化、ソフト化、機能化などニーズに応じた高付加価値品に力を入れている。

〈原綿・不織布・製品まで/帝人フロンティア(K1203)〉

 帝人フロンティアはメーカー機能と商社機能を併せ持ち、乾式、湿式の両不織布とも原綿・不織布・最終製品の生産・開発を行う。今回展ではテーマである「サステイナビリティー・イノベーティング」に役立つ素材から製品まで広く提案する。

 乾式不織布用のポリエステル短繊維では八葉断面の中空タイプ、細繊度のシリコーン加工品「フワリーヌ」、消臭機能を持つ「フレッシュコールZ」、湿式ではショートカットファイバー「テピルス」のほか、高空隙薄葉不織布や「エコペット」使いを提案する。その他、垂直型サーマルボンド不織布の成型品やポリ乳酸スパンボンド不織布、独自の長繊維不織布で再生原料による「ユニセルエコ」や油吸着材「オルソーブ」を訴求。超吸水繊維「ベルオアシス」を使った製品も提案する。

〈エラストマー打ち出す/クラレ(K1211)〉

 クラレはエラストマー事業部としてANEX初出展となる。アジアの需要家に対して衛材用途でのエラストマーのソリューションを提案する。新製品発表の「A―NEXT HUB」でも講演する。

 ブースでは乳幼児用紙おむつに使用されるストレッチラミネート用の伸縮性部材である、エラスティックフィルムを紹介する。同フィルムは薬品臭が少なく、リサイクルが可能で、伸縮性に優れ、はきやすく、適度なフィット感で快適な着用感などを兼ね備える。

〈サステな機能性不織布/東洋紡エムシー(K910)〉

 東洋紡エムシーは不織布用ポリエステル短繊維から長・短繊維不織布までを製造する。自動車、家電、生活資材など向け機能性不織布を日本・アジアで生産するが、今回展ではサステイナブル対応の機能性不織布を紹介する。繊維クッション材「ブレスエアー」では市場から回収した使用済みブレスエアー製品が総重量の25%を占めるRシリーズを提案する。

 その他、使用済みペットボトル再生原料を50%以上使用したスパンボンド不織布「e―ボランス」、帯電不織布の静電気で粒子状汚染物質を効率的に捕集する「エリトロン」、活性炭素繊維を使用した不織布「Kフィルター」を訴求する。

〈差別化されたSBとSL/ユニチカ(K1005)〉

 ユニチカはポリエステル中心のスパンボンド不織布(SB)、コットンが主力のスパンレース不織布(SL)を製造販売する。台湾初開催のANEXを通じて「中華系の顧客はじめ潜在顧客とより多くの接点を持ちたい」と期待する。

 ポリエステルSBでは熱成形性に優れた「マリックス AX」、偏平断面の「ディラ」、SLではコットン100%SLとSBを複合化した「コットエース プラス」などの差別化品を訴求する。

 不織布の海外販売はSBがカーペット一次基布を中心に販売しており、直近はインド向けなどが伸びる。SLはアジア中心に展開。今後は欧米を含めた他地域に注力する。

〈セパレータや膜基材など/日本バイリーン(K1011)〉

 日本バイリーンは幅広い用途に各種不織布を製造販売する。グループ企業で車のフロアマットや不織布用の再生ポリエステル短繊維も製造する。

 今回展では自社の技術とサービスを訴求。静電気除去クロスはスパンレース不織布に制電加工しチリやホコリを取る。産業用バッテリーセパレータはニッケル水素電池用の湿式不織布。

 分離膜基材は独自技術で引張強度・引裂強度・曲げ強度の特性を持つサーマルボンド不織布。幅広い目付に対応し、空隙もコントロール。樹脂のコーティング性や含浸性も高い。

 海外販売は親会社のフロイデンベルググループと協業するも輸出は現地とのコスト差が課題と言う。

〈ゲル複合新商品など提案/エフアンドエイノンウーブンズ(K1112)〉

 昨年12月にアンビックとフジコーが統合し発足したエフアンドエイノンウーブンズ(大阪市中央区)は「2社融合による新たな魅力を世界に発信する」をテーマに出展する。「アドミレックス」はフッ素繊維製ニードルパンチ不織布(NP)とスパンレース不織布によるフィルターバグで低圧損、長寿命が特徴だ。レーヨンやポリエステル製ケミカルボンド不織布やNPの「ヒメロン」は車や家電の緩衝材中心に各分野で使用される。

 不織布とゲルを複合した新商品「ゲルウーブン」も打ち出す。ゲル製品にはないグリップ性を持ち、低周波の防振性に優れる。NP製のOA資材、羊毛フエルトも提案する。

〈和紙など日本製を発信/三木特種製紙(K1009)〉

 三木特種製紙(愛媛県四国中央市)は「あらゆる繊維を紙・不織布にする」をモットーに開発する湿式不織布のパイオニアだ。海外販売は間接含め売上高の40%。今回展で和紙や湿式スパンレース不織布(SL)の製品を展示し「日本のモノづくり」を世界に発信する。

 和紙テープ基材は建築塗装・車両塗装時の養生テープとして世界需要が拡大する。伊予和紙マスクは昔ながら製法の和紙100%製マスク。敏感肌にも優しい。生分解性を持つ和紙と和紙糸による耳紐製だ。食品関連はコーヒーろ紙、お茶や出汁(だし)のパック用ヒートシール性不織布のほか、レーヨン・パルプ製湿式SLはボディシートとして紹介する。

〈SLやナノ不織布を訴求/シンワ(K814)〉

 シンワ(愛媛県四国中央市)はスパンレース不織布(SL)で衛生材料や化粧雑貨向けを訴求するとともに、増強したナノファイバー不織布でも化粧雑貨向けを提案する。

 同社はSL、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布(MB)、ナノファイバー不織布など長繊維・短繊維不織布を製造する。

 SLはインドネシア子会社のシンワ・ノンウーブンズ・インドネシア(SNI)で2024年頭に倍増設、国内の本社工場では新建屋を建設し、MBを新導入するとともに、ナノファイバー不織布も倍増した。今回展ではSNIや中国子会社の紹介も行う。

〈再生原料で全て担える/髙安(K914)〉

 髙安(岐阜県各務原市)は、ペットボトルなどによる再生原料や再生ポリエステル短繊維、ニードルパンチ不織布(NP)を製造販売する。NPは海外への直接販売がないため、今回展で顧客開拓を目指す。世界への環境配慮型原材料の拡大も見込む。再生原料による樹脂製品をペレット化・繊維化・不織布化まで全て担える点もアピールする。ブース壁面は同社不織布製カセット式吸音材も展示する。

 NPはポリエステルなど各種原料使いで、一般のNPで難しい低目付品(1平方メートル当たり50~100グラム)も生産可能な点を訴求。樹脂スプレー・熱セットなど用途に合わせた対応力も提案する。

〈フレックスニットに特化/西川ローズ(K1014)〉

 西川ローズ(滋賀県甲賀市)は、ニードルパンチ不織布、ファイバー吸音材、ファイバークッション材、ステッチボンド不織布「フレックスニット」などを製造販売する。

 今回展は独自技術のフレックスニットに特化した展示で海外での評価を探る。産業資材用のほか、アパレルやインテリア製品のサンプルも用意し、特徴がイメージしやすくする。フレックスニットはファブリックの風合いで、樹脂や接着剤などを使用せずに成形できる。

〈カード用ワイヤなど出品/金井重要工業(K1109)〉

 金井重要工業(大阪市北区)はトラベラ、メタリックワイヤ、針布などの繊維機器と研磨用、空調用、生活雑貨向けの不織布を製造販売する。今回展では「新たな需要・顧客の開拓」に期待する。

 出品する不織布カード用メタリックワイヤは各種繊維に対応するため、多種の表面処理をそろえる。乾燥炉など高温でのヤニ、すす、その他粉じんの除去に使用する耐熱フィルターはガラス繊維製フィルターに比べ折れた繊維の飛散が少なく、交換時の作業性が向上する。

 メタリックワイヤ・針布は、需要増が見込める衛材・車両用の販売強化、メタリックワイヤの表面処理技術を生かした用途開拓にも取り組む。

〈特殊なエアレイドを訴求/金星製紙(K1113)〉

 金星製紙(高知市)はケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布を製造販売する。今回展を通じて直接販売のない海外顧客の開拓や知名度向上を図る。

 出品するのはエアレイド不織布。「エモレイ」は超極細オレフィン系コンジュゲート繊維使いで、なめらか肌触りを持ち、花粉などフィルター材向け。「デコレイ」は不織布密度が均一な凸型。拭き取り性、緩衝性などに優れ、家庭雑貨向けに提案する。その他、径が異なる繊維を積層し密度傾斜を持つタイプはフィルター向けに訴求。日本製紙と共同開発した消臭・抗菌・抗ウイルス性エアレイド不織布も提案する。