先進課題への回答 テクテキスタイル&テックスプロセス 2024(6)
2024年05月21日 (火曜日)
環境負荷低減の加工・材料
世界的に環境負荷低減への要求が高まり、規制も強化される中で産業用繊維も加工や材料の面で新たな技術や代替素材が登場する。今回の「テクテキスタイル&テックスプロセス2024」(4月23~26日、ドイツ・フランクフルト)でもその一端が見えた。
帝人フロンティアは有機フッ素化合物であるペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)不使用の膜材を披露した。
膜材として一般的なターポリンはポリエステルモノフィラメント織物に塩ビ樹脂を含侵させたものが主流だが、塩ビ樹脂加工に使われる添加剤にはPFASが含まれている。
このため同社はPFASを含む添加剤を使用しない樹脂加工を開発し、PFASフリーの膜材を実現した。現在、世界的にPFASに対する規制が強化されているが、それに対応した膜材と言えるだろう。
環境負荷低減への要求はウレタンに対しても逆風となっている。こうした動きに対応するため、印刷インキのDICは米国子会社であるサンケミカルの水系ウレタン樹脂「ハイドランGP」を紹介した。水系のため溶剤の使用量を減らせることや、有効成分の含有量の多さ、架橋剤不使用でアミン系中和剤も使わないことによる臭気抑制、加工工程での温室効果ガス発生量が少ないなど環境負荷の低さなどを訴求した。
初出展の三洋貿易は、森常(石川県かほく市)と共同開発したポリエステル100%のレーザー調織物「クアルテック」を披露した。一般的な合成皮革や人工皮革と異なり、加工にポリウレタン樹脂(PU)やポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を使用していない。このためリサイクル性が高い特徴を持つ。既に日本ではランドセルや楽器ケースなどに採用されている。今回の出展を通じて、自動車シート・内装材や服飾雑貨、アウトドア用品などにも普及させることを狙う。
世界的に環境負荷低減への要求が高まり、規制も強化される流れが強まる中、これまで汎用的な化学物質として幅広く使用されてきたPFASや、汎用素材であるPU、PVCの使用に対しても制限が強まっている。このため産業用繊維の分野でも環境負荷低減に向けた方法論や代替素材の模索が引き続き続くことになりそうだ。