この人に聞く/日本エクスラン工業 社長 小原 則行 氏/安定的収益体制を確立
2024年05月30日 (木曜日)
東洋紡グループのアクリル繊維メーカー、日本エクスラン工業(岡山市)は4月1日付で本社を大阪から西大寺工場に移した。同時に就任した小原則行社長に狙いと今後の方針を聞いた。
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――4月から本社を移転し、減資も実施するなど新体制となりました。
当社は元々、東洋紡と住友化学の合弁でしたが、昨年4月から東洋紡の100%子会社となり、資金調達などは東洋紡の全面サポートを受ける形になっています。そこで今期から資本も適正な規模にしました。また、これまで以上に機能性材料へシフトしなければ生き残れません。そのためには営業と開発の連携をもっと密にする必要があります。製造面でもコスト削減など効率化に向けて、営業と緊密に連携する必要があります。本社を西大寺工場に移すことで製販一体体制としました。
――アクリル繊維を取り巻く環境は。
過去に例のない厳しさでしょう。原燃料価格の高止まりに加えて、中国の景気悪化によって昨年度下半期から輸出も激減しています。世界的にサステイナビリティーへの要求が高まる中、アクリル繊維は化学組成の面でリサイクルの難易度が高いことも逆風になっています。100%ではなく、他素材との混用が中心なこともリサイクルのハードルが高い要因です。
――今後の方針は。
まずは「安定的な収益体制の確立」です。当面は先日発表した価格改定に全力を挙げます。その上で対中輸出への依存度を引き下げる。合繊は量を追い掛けざるを得ない面がありますが、今は量を追わない勇気が必要です。既に生産品種も絞り込み、生産量もある程度縮小しました。
今後はインドや欧州での拡販に取り組みます。アクリレート繊維など機能素材の拡大も進め、インナーのほか、スポーツ・アウトドア、中わたといった用途での拡大も狙います。また、デシカント材料(高分子吸着材)も空調用の除湿材などを中心に伸ばしたい。従来の除湿設備と比べて省エネルギー性に優れる点で評価が高く、海外からの引き合いも増えています。
資材用途も重要です。パルプも含めてアクリル繊維はフィルター部材やブレーキ・クラッチ摩擦材の添加材などで実績がありますから、これを生かしてさらなる用途開発に取り組みます。そのためにも製販一体体制を生かし、技術者がユーザーとディスカッションすることが大切。メディカル用途も超吸水性が特徴の「ランシール」が欧州で実績を上げていますから、今後は中国や米国にも広げることを目指します。
用途は変化するにしても、アクリル繊維の技術をベースにモノ作りを進めることが今後も基本になります。
――企業として目指す姿は。
長年、機能素材へのシフトを言い続けていましたが、今こそ実行するときです。ユーザーが困っていることを発見し、それを技術によって解決するソリューションを提供する。そこに当社が生きる道があると考えています。