綿紡績大手/存在感問われる繊維事業/価格転嫁と海外・EC強化
2024年05月30日 (木曜日)
綿紡績大手の繊維事業の2024年度は、収益が悪化した23年度からの回復を目指す。ユニフォーム地などの価格転嫁を進めるとともに、海外や電子商取引(EC)の事業拡大などに取り組む。大和紡績はダイワボウホールディングス(HD)から独立し、繊維専業の企業としてIPO(新規株式上場)を目指す一方、日東紡は繊維事業を他の事業と融合させ再編した。全社で繊維事業の位置付けが見直される中、改めて存在感が問われることになりそうだ。
22年度は新型コロナウイルス禍からの回復で収益改善が見られたが、23年度は原燃料や人件費、物流費などのさまざまなコストアップが続くとともに、想定以上の円安で収益が悪化。22年度に受注が急拡大した反動や暖冬の影響もあり、下半期からの反転攻勢の計画が不振に終わった。
24年度は引き続き価格転嫁を進め、着実に計画を達成させていくことで来期の成長につなげる。特にクラボウとシキボウは今期が中計の最終年度となる。いずれも中計の目標と乖離(かいり)するが、黒字化が焦点となってくる。
クラボウは原綿改質の機能綿糸「ネイテック」など、独自技術による差別化素材の販売比率を高め、「コト売りを加速する」。4月からユニフォーム地の値上げを進めており、「この成果が表れてくる」との見方を示す。
シキボウは今年1月にシキボウベトナムを設立し、東南アジアでの販売、製造拠点が整った。海外拠点を「売り上げ、利益に結び付けるため、具体的なアクションの年になる」として海外ビジネスを活性化させる。
富士紡HDは増収減益の計画となるが、26年3月期を最終年度とする中計の目標は既に達成しており、「BVD」などインナー製品でのEC比率の向上を図る。ECでの売上高は17年を100とした場合、前期は164と大きく増えている。
大和紡績は計画を非公表とするが、「地に足を付けた目標となっており、かなり確度の高いもの」としており、将来的にIPOも視野に入れ、「持続的な企業価値の向上」に取り組む。「投資もかなり増やす」として、次世代に向けた商品の販売や開発を加速化させる。
今期から新中計が始まった日東紡は、従来の3事業部門から5事業本部に改め、開発・製造・販売を一体運営し、顧客視点での活動を強化。繊維事業部門はなくなり、資材・ケミカル事業本部として、既存事業の枠にとらわれない柔軟な発想と協業によって新規ビジネスを創出する。
日清紡HDの第1四半期(1~3月)業績は前年同期比で減収も、営業損益の赤字幅が縮小。シャツ事業、ユニフォーム事業とも市況低迷でそれぞれ減収・損失拡大となったが、ブラジル拠点の受注回復がけん引した。3カ年の中計では国内ドレスシャツ市場でノーアイロン需要が高まり、EC市場も拡大するという前提で施策を推進。小売事業はOMO(オンラインとオフラインの融合)へのビジネスモデル転換を急ぐ。