特集 スクールユニフォーム(10)/素材メーカー/多角な提案で潮流捉える/東レ/東海サーモ/東洋紡せんい

2024年05月31日 (金曜日)

 ここ数年、LGBTQ(性的少数者)に配慮し、性差の少ないブレザーへの制服モデルチェンジ(MC)が進む中、素材や副資材の供給の在り方も変わりつつある。環境や人権への配慮などSDGs(持続可能な開発目標)を含め、多角的な提案によって、これからのスクールユニフォーム市場で起こりそうな新たな潮流を捉える。

〈総合力で市場深耕/多様な選択肢提供/東レ〉

 東レは2025年入学商戦に向け、環境配慮型素材や梳毛調ポリエステル織物「マニフィーレ」などの差別化素材、インクジェット(IJ)捺染による柄物生地など「いろいろな選択肢を提供できる」強みを生かしながら、ブレザーから体育着まで幅広いアイテムに対応できる総合力で市場を深耕する。

 同社は詰め襟服向けの生地供給が多く、最近の制服MCによるブレザー化で守勢に立たされていた。しかし、この数年で「種まきしたものの芽が出てくる」として、差別化素材や新商品の拡販で攻勢をかける。

 その一つがIJによる柄物生地で「関心が高く、生産面での安定供給や短納期を訴えられる」として、早ければ25年入学商戦からの採用を目指す。下地となる生地を備蓄していれば先染めに比べ納期を「6分の1から8分の1」に短縮できる。生徒数が少ない学校へも提案がしやすくなるとともに、デザイン性の幅も広がる。

 差別化素材ではブレザー向けに梳毛調のマニフィーレの販売が増えるとともに、企業ユニフォームで売れ筋のストレッチ素材「ライトフィックス」も体育着向けに採用が増加。さらに独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を用いた新たな素材開発も進む。

 学校で環境問題に対する教育が活発化していることを受け、学生服メーカーの一部では環境配慮型素材のみを提案してほしいとの要望も出てきた。バイオ原料ポリエステル「エコディア」やペットボトル再生繊維「&+」(アンドプラス)といった環境配慮型素材の採用も増えつつある。

 学生服メーカーが採算悪化を受け、生地の品番を統一し定番商品の見直しを図る中、「当社の総合力を生かせば、まだまだできることが多い」として、新たな切り口による多彩な提案によって市場での存在感を高める。

〈芯地へのニーズに対応/環境配慮型商材も拡充/東海サーモ〉

 芯地・副資材製造卸の東海サーモ(岐阜県大垣市)は2018年、環境方針を策定し、「資源有効活用」「環境負荷低減」の商品カテゴリーを整備してきた。

 資源有効活用カテゴリーは、再生ポリエステル100%接着芯地でGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)を取得し、海外市場向けを中心に販売している。

 環境負荷低減カテゴリーでは、染色しない原着繊維を使用することにより、生産工程での水使用量を削減する商品群を大幅に増やした。

 原着繊維と再生ポリエステルを活用し、資源有効活用と環境負荷低減の両カテゴリーの要件を満たした毛芯地「ニュースタンダードNEO」を使用した裄綿(ゆきわた)など、芯地に芯地加工品を加えたトータルセット提案にも注力する。

 生分解性ポリエステル原料と生分解性樹脂を使用したフィラメント接着芯も共同開発中だ。衣料品業界のリサイクルプロセスの改善、大量廃棄問題解決への貢献を目指す。

 学生服の市場でも、標準服が詰め襟やセーラー服からブレザーへと変わっていくのに伴い、芯地類の需要が伸びている。その分、消費性能、機能性、着用感を左右する風合い感など芯地の品質に関する要求も強まっていることから、「接着芯地と芯地加工品の最適セットの提案」を強化していく。

 スクールユニフォームは、長期間の着用や繰り返しの洗濯への耐性も求められるため、高耐久性の接着芯地を中心に、ニットなどの素材の特性や使用する箇所を考慮した縫製テープ、形崩れ防止に配慮した裄綿などをそろえ、芯地類での最適解を提案していく。

〈強みのニット軸に拡大/国内外連携し製品供給強化/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは2025年入学商戦に向け、ブレザー向けニット生地の販売や、ポロシャツ・体操服など製品OEMの拡販に取り組む。前期(24年3月期)は、制服MCでブレザー化が進んだことで、ポリエステル高混率の高密度丸編み生地を中心にブレザー用途の素材販売が拡大。前の期比で1・5倍に増えた。ダブルニット構造でかさ高性と軽量感のある生地「エックスジャケット」の受注も増加した。

 優れた紫外線遮蔽(しゃへい)性と防透け性を持つ生地「レイブロック」などを使ったポロシャツや体操服といったニット製品の供給も拡大し、製品が学販向けの売り上げの半分を占めるまでになった。定番商品ではインドネシアの縫製拠点シンコウ・トウヨウボウ・ガーメント(STG)を活用するとともに、国内の自社工場や協力工場では追加受注のフォローを中心に対応するなど「国内外で連携しながら効率化も進んだ」。

 今期(25年3月期)も製品OEMでは新規の協力工場の開拓を進めるとともに、STGではまだ生産していないブレザーやボトムスといった重衣料関連も「要望が出てくれば対応できるようにしておきたい」。特にニット生地使いのボトムスでは地糸切れしやすいなどの課題もあるが、技術革新にも取り組む。

 高通気でありながらも防透け性が高い「サマークール涼夏」や、洗濯脱水後の乾燥スピードを向上させた「速衣バージョンS」といった差別化したニット地をラインアップ。製品でもダブルフェースの丸編み地を使った新発想のセーター「NEOセーター」を打ち出した。独自性の高い商品を充実させ、これからのスクールユニフォーム市場で求められるニーズを着実につかむ。