特集 スクールユニフォーム(11)/素材メーカー/ニッケ/御幸毛織/東亜紡織/シキボウ

2024年05月31日 (金曜日)

〈服から服への循環進む/設備投資進め安定供給/ニッケ〉

 ニッケの今入学商戦は、「国内に先染め生地の設備をしっかり持っていることが強みとなっている」として、大きな混乱もなく供給ができた。来年の制服モデルチェンジ(MC)も高水準で推移すると予測され、依然として学生服メーカーがMCで新規物件の受注を前倒しする傾向がある中、設備投資を進め安定供給に努める。昨年、工場と本社で一元化したシステムが稼働。これをグループ会社にまで広げ、生産や販売管理など“見える化”による安定したモノ作りの基盤の構築を進める。

 昨秋には岐阜工場(岐阜県各務原市)で環境配慮型ウール・ポリエステル混紡糸「ブリーザ」の生産に活用する革新紡機を増設した。紡績工程が短縮されるなどの効果で同社従来品と比較して消費エネルギーを約55%削減。特殊な糸構造によって着用中や洗濯時のマイクロプラスチック放出量も75%削減できる。

 そのブリーザを使った生地「エミナル」の採用が増えつつある。軽くストレッチ性があり、ウールによって吸湿性や保温性にも優れる。環境配慮に対する教育が活発になる中、学校へもエミナルが土に返るウールと再生ポリエステルとの複合素材であるという認知度を高める。

 今春から私立駒場学園高等学校(東京都世田谷区)の協力を得て、服から服への循環型の取り組みを開始。卒業生から提供された制服を分解・反毛して生地に戻し、縫製した制服を新入生に着てもらうという、梳毛ウールでは世界初の取り組みも始めた。他の事例も増やしながら、新たなリサイクルプロセスの構築を目指す。

〈ストレッチ機能品が好評/価格交渉進展図る/御幸毛織〉

 御幸毛織ユニフォーム事業部の2024年3月期売り上げは、学生服地、民需、官需、ファイバーの4分野全てで予算を達成した。このうち売り上げ構成の6割ほどを占める学生服地では、原燃料費高騰と円安が懸念材料として残る。今期は価格交渉を進めるなどして前期比微増を目指す。

 学生服のブレザー化や低価格志向の影響を受ける中、ウール20~30%の低混率製品、伸長率を15%ほど高めたストレッチ機能を持つ製品の需要が増している。これらのニーズを踏まえながら来春に向けては、学生服メーカーとの協業による製品開発や、長短複合糸を使いウール独特の風合いを持つ主力商品「プロタック」の訴求に重点を置く。

 一方、糸値や加工費、運送費の高騰、円安の進行などにより原価が膨らんでいることから、今期は価格の値上げ交渉を進めていく方針を示す。

 東洋紡グループ間での協力体制を敷いており、紡績は東洋紡マレーシアが主体。海外生産拠点は他にASEAN域内などで検討はしているものの、現在の為替相場などから国内でのキャパシティー確保を優先する。

 SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みとして、四日市農芸高校と共に取り組む学生服地を活用した生分解プロジェクトは継続して検証を進めている。

〈納期対応への精度高める/GWで持続可能な提案も/東亜紡織〉

 東亜紡織は、紡績の宮崎工場(宮崎県都城市)にワインダーを増設するなど、生産性の向上で安定供給を図りつつある。来年の入学商戦に向け、設備投資の効果による納期対応への精度を高める。

 売り上げの10%前後を占めるセーター、ベスト、カーディガンなどニット製品のOEMも、生産拠点のトーアニット(岡山県真庭市)を軸に再構築し供給力を高めている。協力工場を通じて編み機の確保を増やすとともに、デジタル技術で企業を変革するDXによってロスを減らし生産の効率化を推進。学生服地、製品の「トータルで提案できる」強みを生かす。

 環境配慮に対する学校教育が活発になる中、学生服メーカーもそれに関連する素材を採用するケースが増えてきた。同社ではウール・ポリエステル混の高強力・高耐久織物「フェルテラ」や、ウールと生分解性ポリエステルとの複合素材「バイオハーモニー」など、環境配慮型素材のラインアップを充実させている。

 さらに尾州の染色最大手ソトーなどと連携する、持続可能な調達・製造工程のトレーサビリティーの達成に向けた「グリーンウールバリューチェーン」(GW)をスクールユニフォーム市場でも広げる。既にその製品が循環型社会の実現に向けてどう貢献するかを一目で分かるラベルを作成しており、消費者が見ても「分かりやすく、学生服メーカーとも取り組みながら発信する」考えだ。

〈SDGs対応素材を拡充/製品供給も見据える/シキボウ〉

 シキボウは、SDGs(持続可能な開発目標)を切り口にした素材を拡充している。最近、採用が増えているのが「コットン∞」(コットンエイト)。同素材は国際フェアトレードラベル機構が認証したフェアトレードコットンを8%以上混綿した糸で、豊田通商や信友と連携しながら販売。昨年、ビジネスシャツへの採用を皮切りに、ワーキングなどユニフォームへも採用が増えてきた。

 スクール向けではまだ採用実績はないが、人権教育に力を入れる学校も多く、コットン∞を通じて人権や環境への配慮について学ぶ機会にもつながる。

 生分解性ポリエステル「ビオグランデ」といった環境配慮型の原料使いにも関心を示す学生服メーカーが増えている。グループの新内外綿と連携するアップサイクルシステム「彩生」ではベトナムなど周辺の縫製工場から端材を集め、タイで反毛する試験的な取り組みも始めた。

 台湾の長繊維合繊糸を使ったトリコットやウール調ポリエステル生地などの拡販にも注力。エンボス加工で生地表面に変化を付ける、転写プリントを施すといった差別化を図ることができる。さらにニット製品課と連携しながら、製品OEMも提案できる。同社のスクールユニフォーム向けはシャツ地の販売が中心だが、さまざまな生地を活用できる強みを生かし、将来的にはジャケットやボトムス向けの生地、製品供給も見据える。