特集 スクールユニフォーム(12)/商社/的確にニーズ捉えて供給

2024年05月31日 (金曜日)

 スクールユニフォーム市場では素材メーカーと学生服メーカーをつなぐ商社の役割が大きい。この数年、制服モデルチェンジ(MC)が急増する中で安定供給できているのも、商社が存在するからと言っても過言ではない。生地の調達から製品の生産まで的確にニーズを捉えながら、スクールユニフォームのサプライチェーンを支える存在として力を発揮し続ける。

〈「服育」20周年8月にイベント/チクマ〉

 チクマ(大阪市中央区)の学販向けを中心としたキャンパス事業部は、来年の入学商戦に向けて今年と同規模となる200校以上の制服MCへの供給を目指す。強みとする環境配慮と服育を切り口に、制服MCへの供給を増やす。

 ジャケット向けのウール・再生ポリエステル混素材「C’sサステナ」をはじめとした環境配慮型素材の販売は「かなりのボリュームになってきた」。学生服メーカーと環境配慮型の織物の開発を進めるほか、古着回収リサイクル事業「チクマノループ」の活用も図る。少子化で制服の需要減少が懸念される中、「小学生服の市場創造」にも取り組む。

 今年初めには計画生産チームを立ち上げ、柄物を中心とした生地の発注を管理。よりスムーズに供給できる体制を整えた。

 「衣服を通じて心を育む」の意味を込めた概念「服育」の提唱を始めてから今年で20周年となる。8月2日には梅田スカイビル(大阪市北区)タワーウエスト36階で「服育とできる20のこと」をテーマとしたイベントを開く。制服の展示や講演会を企画しており、服育ができるさまざまなアイデアや視点を紹介する。同社ホームページから参加の申し込みができる。

〈柄物需要の拡大に応える/牧村〉

 牧村(大阪市中央区)は、スラックスやスカートなどボトムス向けの柄物を厳選した見本帳「ジュニア・パレット・プラス」の販売に力を入れている。制服MCによるブレザー化で柄物需要が増える中、同見本帳を軸に販売を伸ばす。

 生地はウール30%・ポリエステル70%の織物が中心で、家庭洗濯ができるほか、再生ポリエステルを使い環境配慮の面からも訴求できる。自治体で統一された標準服へも提案しやすいように、チェック柄を豊富にそろえるほか、ペア柄やオリジナル柄のバリエーションをCGで作成して提案するサービスによって採用率を高める。

 セーターやベストなどニット製品についても、学生服メーカーの納期対応の前倒し生産に対応するとともに、「1年を通じてモノ作りができる」ように昨年から協力工場を通じた増産体制をとっている。

 今期(2024年5月期)はジュニア・パレット・プラスの貢献もあって、微増収となりそうだが、さまざまなコストアップから利益面は減少する見通し。来年の入学商戦に向けては価格転嫁を進めるとともに、自治体で統一型制服の導入が進む中、強みとする柄物を軸に安定供給に努める。

〈環境配慮型素材を拡充/ナカヒロ〉

 ナカヒロ(大阪市中央区)は、ビジネスユニフォーム向けに展開する独自の環境配慮型素材「エコサス」を学販へも提案する。「エコサス・スクール」(仮称)として環境配慮型の生地を提案し、2026年の入学商戦から本格的な採用を目指す。

 エコサスでは再生繊維や植物由来繊維使いの独自開発の織物など、グリーン購入法に適合する生地をラインアップ。エコとユニフォーム地としての機能性、ファッション性を兼ね備えるとともに、「ウールは生分解性をはじめ、天然繊維としての良さもあり、まとめて企画として打ち出す」ことで採用を広げる。

 同社では、環境省の広域認定制度による使用済みユニフォームをリサイクルする「エコシップ」や、エコログ・リサイクリング・ジャパン(広島県福山市)を通じた繊維製品の循環型のマテリアルリサイクルの仕組みも構築しており、学販での活用も検討する。

 生産面では、ビジネスユニフォームの生産で活用していた縫製工場を学販でも活用するといった改革の効果が少しずつ出てきた。ユーザー目線による営業力の強化も図っており、学生服メーカーや販売店などと「チームの一員として一緒に取り組む」姿勢を形作りながら、来入学商戦でも制服MCへの生地供給で維持、拡大を図る。

〈海外縫製一部で開始/アカツキ商事〉

 アカツキ商事の今春の入学商戦は計画比やや未達となった。来期に向けた課題として、適正在庫に向けた計画生産や価格改定などを挙げる。被服製品価格は15%、生地、シャツ、小物類は各10%をめどに値上げ交渉を進めていく方針。

 今春販売した製品の一部はベトナム、中国で縫製を行った。国内縫製のキャパシティーが逼迫(ひっぱく)する中、安定した商品供給を確保することが目的。今後、海外縫製をさらに拡大していくことも視野に入れる。物流面では、千葉、茨城県内に設置している物流センターをアウトソーシングで運用しており、在庫や繁閑期の人手の増減に柔軟に対応できる点が強み。

 デジタル技術で企業を変革するDXでは、教員の課題解決をサポートする校務分野のほか、生徒募集につなげるメタバース、人工知能(AI)チャットなどを加え、新規受注を見据えながら拡充を図る。電子商取引(EC)システム「ニッケメイト」は今春150校で利用されており、さらなる拡販を目指すとともに、受注から出荷までのシステム連携を図る。26年春に「マリ・クレール」ブランドの制服の導入が1校で決まった。新作と併せて引き続き提案を強化する。

 このほか、関東地域他の中小アパレル企業との共同縫製、共同仕入れ体制構築に引き続き取り組んでいく。

〈きめ細かな対応で存在感/イシトコテキスタイル〉

 イシトコテキスタイル(大阪市中央区)は、今入学商戦の制服MCに向けてスムーズな生地供給に努め、今期(2024年5月期)業績で前期並みを確保しそうだ。SDGs(持続可能な開発目標)に沿った生地提案を強めるとともに、小ロットやきめ細やかな対応によって「市場での存在感を高める」方針だ。

 学校からのSDGsに対応した素材のニーズは「コスト面で上がり過ぎ、提案が受け入れられるまで時間がかかる」ものの、粘り強く提案を図る。最近、SDGsに関連する学校教育が盛んになる中、中学校や高校で着用する制服に対する認識が変化する可能性を見越し、よりニーズに沿った提案ができるように新たな見本帳の作成に取り掛かる。

 提案する素材としてはシキボウのフェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)や、繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」、生分解性ポリエステル短繊維「ビオグランデ」など。来年以降の入学商戦から採用の本格化を目指す。

 性的少数者(LGBTQ)への配慮で需要が増えているブレザー向けでは東亜紡織の「制服物語」の生地提案を強化。チェック柄を中心に受注が多く、男女差が出にくい色柄の提案などに取り組む。

 さらに女性特有の健康に関する問題の解決を目指すフェムテックを切り口にした企画も検討。学校の新たなニーズを捉えながら、スクールユニフォーム市場で光る存在を目指す。

〈合繊の強み訴求/東レアルファート〉

 東レアルファートは、ポリエステル生地やシャツ向けのニット地など、強みを生かした提案で受注を獲得している。

 2024年3月期、学生服部門では増収を達成した。ただ、「メーカーが早期に備蓄生産する傾向にあり、例年はモノが動かない時に動いた」(本間徳ユニフォーム事業部倉敷営業所長)ことが要因とみる。

 中学校を中心としたブレザーへのMC増加に伴い、シャツの採用が増える傾向にある。同社でもシャツ向けのニット生地の販売が堅調だ。布帛よりも価格は高いが、イージーケア性といった機能性が評価されている。

 さまざまな機能が付与できる合繊の強みも訴求。その中で、再生ペットやバイオペットなどを採用した、環境配慮型の生地の提案にも力を入れる。

 ブレザー制服で採用される柄物のボトムス向けに、インクジェットによる柄物生地の提案も進める。多品種・小ロットへ対応できることから、学生服メーカーからの関心は高い。本間ユニフォーム事業部倉敷営業所長は「物性面で乗り越えないといけない課題はあるが、試作を積み重ねながら採用につなげていく」と話す。

 さらに今後は、製品OEMの部分にまで踏み込みながら提案を進めていく。

〈伊藤忠商事/学生服ECで新販路開く〉

 伊藤忠商事の学生服・学用品電子商取引(EC)プラットフォーム「学校生活」を活用する学校が徐々に増えている。現在は、私学が中高合わせて13校、公立2校の計15校が利用。今春には、同システムをベースにしたリユース学生服のCtoCプラットフォーム「学リレ」を立ち上げるなど、学販市場における新たな流通経路を切り開いている。

 学校生活は、学校向け商材を扱う販売代理店を通じて、学校指定の学生服や学用品の販売のほか、シューズやレインコート、といった一般アパレル品を利便性の高いECで展開。学生服販売などは学校内でIDとパスワードを持つ保護者らだけが閲覧、利用できる仕組みとするなどセキュリティーを高めている点が特徴だ。現在は学生服と体操着が売り上げの9割を占めると言う。昨年からは「学生服リユースショップさくらや」も出店している。

 一方、学リレは、需要が高まる学生服リユースのCtoC市場開拓のために立ち上げた。匿名性を確保した上で、商品を学校関係者以外に流出させることなく、同じ学校内の生徒の保護者同士で売買できる。ビジネスモデルは売り主側が提示した額の15%を手数料として同社が得る。

 現在、導入実績2600校以上の実績を持つ理想科学工業のデジタル連絡ツール「スクリレ」との連携による拡大策も進めている。