繊維ニュース

大長 生地販売を新加工につなぐ

2024年06月03日 (月曜日)

 湖東麻産地の染色加工場、大長(滋賀県東近江市)は海外市場向けを中心に生地販売を増やす。情報収集が第一の目的で、得られた情報を新加工の開発に生かす。受託加工の取引先とのカニバリゼーションが起こらぬよう、欧州の新興アパレルなどを軸に開拓を図っていく。

 同社は、連続漂白機や毛焼機、各種染色機、ノーテンション乾燥機など、多種多様な設備を保有する。その組み合わせでさまざまな加工を生み出し、差別化を図っているが、「今後は中国などでも小ロットの加工に対応する企業が出てくる。競争に勝つためにも新しい加工の開発が不可欠」とした。

 新加工開発強化の一環として進めるのが生地の販売拡大だ。イタリアの服地見本市「ミラノ・ウニカ」の出展などを通じて販路・顧客開拓も進んできた。海外市場開拓に加え、受託加工が主力の国内では「海外向けを志向するデザイナーズブランドとのビジネスを行う」方針だ。

 提案するのは「近江晒」加工などの高付加価値品が中心になる。近江晒加工は、生機を繰り返しもみ込むことで洗いざらし風のシワ形状と膨らみのあるソフト感を表現した。ウール混やナイロン複合といった生地に加工を施したバリエーション(晒は行っていない)の提案も強化する。

 近江晒加工は、同社を代表する素材に成長しており、このほど東京都内で開いた個展でも紹介した。個展では、繊維の改質で熱伝導性を高めた「クール加工」、ニューストレッチ加工で伸縮性を付与した綿100%楊柳、リサイクルリネン、製品染め用のプリント下などを並べた。