ごえんぼう

2024年06月07日 (金曜日)

 植物を上手に育てる人を「グリーンフィンガー」(緑の指)と呼ぶ。サボテンさえ枯らしてしまう筆者には憧れの存在だ▼絵本『みどりのゆび』の主人公、チト少年もグリーンフィンガーの持ち主。しかも、触れるだけで種を芽吹かせ、花を咲かせる。居眠りばかりで学校になじめず退学してしまうが、その不思議な力で奮闘する物語だ▼刑務所に花を咲かせ囚人に思いやりの心を目覚めさせたり、病気の少女を花で笑顔にしたり、動物園のおりを動物たちの故郷の植物で満たして元気づけたり、次々と奇跡を起こす。だが、優しい父親が武器商人であることを知ったチト少年は、戦争を止めようと武器に花を咲かせて亡くなってしまう▼花や緑は気持ちを和ませくれるが、世界の厳しい現実に照らすと夢物語。しかし、チト少年が咲かせた花は、苦しむ人に寄り添う、争いを止める行動の象徴とも解釈できる。花開くまで諦めてはならない。