不織布の今  ANEX2024から(4)

2024年06月11日 (火曜日)

絞り込んだ提案も

 展示会ではさまざまな製品を展示する企業もあれば、絞り込んだ提案を行う企業もある。アジア不織布産業総合展示会「ANEX2024」(5月22~24日、台北市)に出展した大手も違いがあった。

 絞り込んだ典型がクラレだ。しかも不織布ではない製品を提案した。同社は繊維カンパニーに不織布製造子会社、クラレクラフレックス(大阪市北区)があるが、今回展はイソプレンカンパニーのエラストマー事業部が出展し、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」とそのハイグレード版「ハイブラー」によるフィルムを紙おむつ用に提案した。

 これまで原料販売だけだったが、紙おむつのウエスト部分に使われるフィルムとしての販売を目指し、最近は欧州の不織布展「INDEX」や今回のANEXなど不織布関連展へ出展する。

 紙おむつのウエスト部分はスパンデックスを使うのが主流。しかし、セプトンフィルムを使用することで見た目もすっきりし、接着剤不要で環境に優しいのもメリットと言う。物性も問題ないが、スパンデックスとの価格差が大きく、紙おむつ用はまだ少ない。

 ユニチカはポリエステルスパンボンド不織布(SB)、綿100%スパンレース不織布(SL)の差別化品に絞り込んだ。ポリエステルSBは太繊度のドッグボーン十字断面を持つ「ディラ」、2成分の複合SB「エルベス」など既存品を紹介した。

 帝人フロンティアと並ぶ大型ブースだった大和紡績は、展示品は絞り込んだ。ダイワボウレーヨンも含めたグループでの出展で「サステイナビリティー・イノベーティング」というANEX2024のテーマに沿った提案を行った。大和紡績はPLA(ポリ乳酸)とPBS(ポリブチレンサクシネート)からなる芯鞘複合繊維で生分解性を持つ「ミラクルファイバーKK―PL」、レーヨン短繊維製SL「アピタス」、ダイワボウレーヨンは不織布用の各種レーヨン短繊維と海水中生分解性を確認し、国際認証「OKバイオディグレイダブル・マリーン」を取得する「エコロナ」を展示した。

 今回展は短繊維不織布メーカーが多い台湾の市場調査の意味合いもある。その中で海外の販売を拡大するには「レギュラーではなく差別化品」として、それに対応したブースに仕上げた。

 日本の不織布関連企業はこうした大企業だけではない。中小企業が多い。彼らもANNAパビリオンで独自性を打ち出した。