東京支社開設50周年記念「3K・3C・IT・D」/環境への対応は・エコと経済の両立に向けて

2002年05月13日 (月曜日)

 環境破壊、ゴミ処理問題、資源の枯渇化。21世紀は環境の世紀といわれる。個々の事業活動においていかに環境負荷を低減するか。同時にエコロジーとエコノミーを両立させることが課題である。繊維産業各社の環境対応、環境ビジネスへの取り組みをみた。

水の不安を解消/三菱レイヨン「クリンスイ」

 周辺環境の悪化を実感するのが水である。カルキ臭やカビ臭だけでなく、雑菌や鉛の混入も心配。この水の不安を中空糸膜フィルターという技術を使って、解消するのが三菱レイヨンの清水器「クリンスイ」だ。

同社は鉛・トリハロメタン除去能力に優れた普及タイプの据置型家庭用清水器「クリンスイ・スーパーSTX」を昨年7月から発売した。労働厚生省は03年の水質基準改定で、鉛濃度を現行の5倍近く厳しくする方針だが、住宅への引込管には鉛管が多く使用されており、鉛対策が重要になっていたためだ。

また、この3月からはカートリッジ交換時期などが一目で分かる液晶清水ディスプレイを装備した、鉛とトリハロメタンの除去能力に優れた蛇口直結型家庭用清水器「02クリンスイ」を発売(価格はカートリッジ付きで本体9800円)した。

清水性能としてセラミック、活性炭、中空糸膜フィルターの組み合わせでカルキ臭、カビ臭、赤サビ、雑菌などの従来のろ過機能に加え、イオン化した鉛やトリハロメタンの80%以上を除去することができる。

これはポリエチレン中空糸の壁面で、水道水中に含まれる0・1マイクロメートルの粒子や雑菌、赤サビを除去。トリハロメタンは活性炭が吸着除去し、イオン化された鉛もセラミックを使用の特殊フィルターの働きで除去するというシステムである。

ボトルtoボトル目指す「エコ派宣言」の帝人

 帝人は循環型社会を目指す「エコ派宣言」を掲げる。同社は、ペットボトルを原料にした再生ポリエステル「エコペット」、使用済み製品の回収・再生システム「エコサークル」、ポリエステルの製造触媒でアンチモン、ゲルマニウムなどの重金属を用いない「新チタン系ポリエステル製造触媒」技術を開発。さらに世界初のボトルtoボトル事業に向けて4月から、帝人ファイバー徳山事業所で、新原料リサイクル事業を開始した。

今回操業を開始した施設は、新設した回収処理設備と既存DMT(テレフタル酸ジメチル)工場を原料リサイクル工場に設備改造したもの。キャップやラベルなどの異種ポリマーや金属などの異物を効率的に完全除去。年間ペットボトル3万トン(500ミリボトル約10億本相当)から、バージンと同等の高純度のDMT約2万4000トンをリサイクルできる。

また、03年10月までに、能力を2倍にし、DMTをペットボトル原料に適した高純度テレフタル酸(PTA)に転換する設備とPTAからペット樹脂を製造する設備を新設し、年間6万トン規模の"ボトルtoボトル"事業を立ち上げる計画だ。

ペットボトルは使用量、回収量とも年々増加している。だが、リサイクル方法は粉砕してフレークやペレットにして製品化するマテリアルリサイクルがほとんど。この方法では再生用途に限界があり、回収品を消化しきれなくなる懸念があるという。ボトルtoボトルが実現すれば、資源を最大限有効活用し、廃棄物を極小化する完全循環型となる。

環境ISOの認証取得/生分解性繊維も事業化

 カネボウ合繊は01年度、全工場と研究所でISO14001の認証を取得した。また、02年より施行のPRTR(環境汚染物質の排出・移動登録制度)法に対応した化学物質の取り扱いと管理強化を図る。さらに、地球環境を考えた自然循環型の生分解性繊維「ラクトロン」の事業化を推進する。

 4月から「ラクトロン」を使用した最終製品を「カネボウ環境倶楽部」のブランドで本格販売。健康、快適、環境の3つのカテゴリーに分けて商品展開する。カネボウ繊維は「ラクトロン」を「とうもろこし繊維」として販売。綿、レーヨン、ウールとの複合で従来にない素材を上市する。カネボウとしてペットボトルのリサイクル「ベルリサイクル」も提案する。

 ユニチカも生分解性素材「テラマック」を販売。衣料用途のほか、食品包装・農業用のフィルム、肥料袋などのシート、農園芸・土木資材用のスパンボンドなどに展開。透明フィルムの封筒窓貼りやティーバッグにも利用されている。

 また、昨年11月には岡崎工場など岡崎市のグループ5事業所がISO14001の認証を取得。1月1日付で、水処理設備、焼却炉、大気汚染防止設備などを扱うエンジニアリング事業本部を「環境事業本部」に改称し、柱事業にしていく考えだ。

 東レグループは、安全、衛生・防災・環境保全を最優先課題としている。大気汚染防止・水質汚濁防止、化学物質管理とともに、廃棄物の削減を推進。地球温暖化防止のための省エネ対策、リサイクル推進などの諸活動も行う。

 ナイロン6を再び合成する完全循環型のケミカルリサイクルを実施するほか、再生ポリエステル繊維の「エコログ・リサイクリング・ネットワーク」を推進、炭素繊維リサイクル、紙リサイクル、荷資材リサイクルなどにも着手する。

 旭化成グループの環境に関する方針は5つ。(1)新技術、新製品の開発に当たっては、国内外の環境保全に関する動向を配慮する(2)原材料の選択に当たっては、生態系と天然資源の保護に留意するとともに、リサイクル原料の採用に努める。

また、(3)製造工程においては、原燃料と副資材の合理的な使用と貯蔵、省エネルギーを推進し、廃棄物と排出物を最少化し、かつ適正処理を図る(4)工場の運営においては、固有の地球環境にも配慮し、絶えず環境改善に努力する(5)事業活動の環境情報を整理、公表し、社会に対する透明性の向上を図る。

 クラレは1月につくば研究所がISO14001の認証を取得し、これで全生産事業所・研究所で同認証の取得を終えた。同社グループは「クラレグループ地球環境行動指針」に基づき、PRTR法対象物質の排出量や産業廃棄物外部処分量の削減、廃棄物の有効利用などに取り組む。また、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルを効率的に組み合わせた「ダブルリサイクルシステム」も構築し、同システムで作った焼却灰を土壌改良材として販売する。

環境負荷低減システム/クラボウ「クラブ・オー」

 カネボウ繊維の長浜工場、大垣工場はISO14001の認証を取得。日清紡の美合工場は98年5月に日本の染色業界では初めてのISO14001の認証を取得した。毛紡では深喜毛織が紡毛メーカーとして日本初の認証を99年12月に取得するなど、紡績も環境ISOの認証取得に積極的である。

 クラボウは、「ナチュラル素材」シリーズを提案する。ケナフと綿を混紡した「紅麻綿」、ヘンプと綿を混紡した「ヘンプ・コットン」、竹や笹の持つ殺菌作用に着目した綿混紡「バンブーコットン」、中空率が70~80%あるカポック繊維を使った「カポック」である。エコマーク取得の「リターンコットン」(未利用綿使用)や環境に配慮した加工「L・C・F」なども開発。

 また、日本紡績協会・NED(新エネルギー・産業技術総合開発機構)との取り組みで進めているのがコットンリサイクルシステム。同社の「03春夏東京素材展」では、「新反毛化技術」や「パネル等製造技術」を実際に作った製品で紹介した。

 さらに、環境負荷低減の生産・加工・販売システムが「クラブ・オー」。原料段階では化石エネルギーの使用削減、原料使用量の節約、エコロジー素材を使う。生産加工工程では、酵素精錬で苛性ソーダや塩素を使用しない。可食性柔軟剤を使い、ノンホルマリン加工に徹する。排水中のリン削減、二酸化炭素の排出量も削減する。

 製品加工段階では節電、節水、廃棄物削減、リサイクル副資材の活用を進め、物流では省エネ、物流資材の簡素化、段ボールのリユースを。販売では包装材の節約・リユース、再生紙の活用、廃棄製品のリサイクルに努めるというものだ。同社は人と地球に優しい「ヒューマン・フレンドリー」発想を基本にしており、これらの商品、システム作りはその一環である。

2商社と取り組む東洋紡/エコビジネスを推進

 東洋紡は97年4月1日付で、社内の委員会組織を改編、地球環境と安全保安の2つの推進委員会を設置し、環境と安全を企業経営のキーワードとして取り組みを推進する。

 01年度からは「エコロジカル・ハーモナイゼーション」をスローガンに掲げ、環境マネジメントシステム構築推進、エネルギー対策、産業廃棄物低減活動、化学物質管理強化、グリーン購入推進、エコビジネス推進、環境情報開示(環境報告書発行、環境会計導入)、関係会社の環境管理充実を重点課題として環境保全活動を進める。

 96年に総合研究所、つるが工場、98年犬山工場、01年に庄川工場がISO14001の認証を取得。関係会社でも東洋化成工業・高砂工場などが認証を取得した。

 エコビジネスでは、三菱商事と共同で再生ポリエステル繊維「エコールクラブ」を展開。ワーキングウエアやオフィスウエア、学校制服、サービスユニフォーム、スポーツウエアなどのほか、帽子、傘、ロールスクリーン、マネキンなどを生産・販売する。

 グリーン購入法が施行されたこともあり、昨年4月から本格的ネット通販サイト「エコールクラブドットコム」をスタート。サイトを共同運営する三菱商事は、「無駄なカタログや営業経費を省き、受注生産により、オーダーメイドのユニフォームを通常より30~60%安い低価格で提供できるようになった」という。

 また、東洋紡は三井物産とも「環境ホルモン検出キット」を共同展開。ガスクロマトグラフィーなどを用いる従来法に比べ、特殊な装置や機器類を必要とせず、簡易に測定できるのが特徴である。

緑化、排気ガス浄化も/リサイクル商品開発進む

 シキボウは再生ポリエステル使用の素材を拡販。ユニチカテキスタイルも「ユニエコロ」をユニフォームやスポーツ分野に向ける。ダイワボウは化学物質を排除した仕上げ加工や染色「ケミカルフリー」「エコセーフ」などを展開し、落ち綿使いの「ジンモ」はエコマークを取得した。また、同社のポリプロピレンは、非塩ビ、アスベスト代替素材としても注目されるという。富士紡は再生ポリエステル使いのシャツ地「エコゼックス」を販売。日清紡は、繊維製品リサイクルシステムの確立とリサイクル商品の開発を進める。

 トスコの産業資材部は、緑化資材の「ビオシス」シリーズを開発した。ビオシスロールは、水生植物の植生基盤材として植生を助け、浸食を防止するもので、素材にはヤシ繊維を使う。ビオシスネットは法面の土壌流出や洗掘防止機能を有す。人口浮島のビオシスアイランドなども。

 また、ディーゼルエンジンの排気ガス中の黒煙を主体とした粒子状物質を捕集・浄化するフィルターも生産。炭化ケイ素製セラミックスファイバーを積層し、蛇腹状に折ったこのフィルターを採用したシステムは、東京都指定粒子状物質減少装置として指定されている。

レナウンも認証取得/商社も環境商材開発

 蝶理は、ゼロホルマリンの形態安定製品加工「ノックスノック―ロイヤル」を展開する。デンプン系薬剤のイオン結合方式の加工は、製造工程でも全くホルマリンを使用しない。麻100%、綿麻の紳士・婦人シャツ、ブラウスで実績を上げる。「麻素材でも家庭洗濯でき、ソフトな風合いが繰り返し洗濯しても維持できる。綿、麻、キュプラ、テンセルのほか、ウールも研究中」だ。生分解性繊維、備長炭繊維などの環境商材も手掛ける。

 トーメンはISO14001の認証を取得するほか、ペットボトル・リサイクル商品を同社幹事の「エコスマイルグループ」で拡販する。アパレルではレナウンが、00年に笠間事業所でISO14001の認証取得。この1月には上海レナウンも取得した。