特集 台北紡織展(10月15~17日開催)/サステの最新トレンド一堂に

2024年08月05日 (月曜日)

 台湾の繊維産業連合会、紡拓会は10月15~17日の3日間、台北市の南港展覧館で繊維総合展「第28回台北紡織展」(TITAS)を開く。国内外400社強が出展する。欧米スポーツ市場向けのサステイナブル素材の最新トレンドが一堂に集う。主要出展メーカーの出展内容を紹介する。

(台北=岩下祐一)

〈立体構造採用などの編み物/遠東新世紀〉

 長繊維から編み物、衣類まで一貫展開する遠東新世紀(ファーイースタン・ニューセンチュリー)は、工場の回収排気ガス由来のポリエステル「TOPGREEN Bio3」(トップグリーン・バイオ3)を使った革新的でサステイナブルな二つの編み物を訴求する。

 一つは、トップグリーン・バイオ3と節水染色、立体編み技術を組み合わせ、見る角度や着用者の動きによって色が変わる立体構造を採用した編み物だ。「太陽の下できらめく海」を表現した同編み物は、ドイツの「レッドドット・デザイン賞2023」を受賞。パリ五輪からインスピレーションを受けた「風にはためく旗」をイメージした同編み物は、ドイツの「iFデザイン賞2024」を受賞した。

 もう一つは、トップグリーン・バイオ3と、サステな花形の異形断面長繊維を使った編み物「FENC ThermalSync ZoneTech」(FENCサーマルシンク・ゾーンテック)だ。熱を吸収し、ドライで通気性が良く、体を一定の温度でドライに保つ。同じくiFデザイン賞2024を受賞している。

〈MS素材使いの編み物/儒鴻〉

 編み物とスポーツウエアのOEM/ODMを手掛ける儒鴻(エクラット)は、サステイナブルな素材使いと、機能糸の組み合わせや組織で機能性を付加した編み物を訴求する。中でも、メカニカルストレッチ(MS)素材使いの「PrimfitZero」(プライムフィット・ゼロ)を今回展の目玉として打ち出す。

 プライムフィット・ゼロは、通気性が高く快適で軽量かつストレッチ性が高い。ポリウレタン(PU)を使ったストレッチではなく、ポリエステルのMSのため、廃棄衣類のリサイクルが可能なモノマテリアル(単一素材)であることが特徴だ。

 「Softform」(ソフトフォーム)は、独特のコイルのような編み組織により、柔らかな手触りを表現。マイクロファーバー汚染の原因の一つとされる起毛加工が要らず、起毛の時間やコストも省くことができる。「Drylight」(ドライライト)は、柔らかく軽量で薄い吸湿速乾性に優れた素材だ。

〈TPEE膜使いの防水透湿織物/昊紡〉

 合繊使いの機能性織物と編み物をベトナムおよび台湾で生産する昊紡(グランド・テックス)は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)フィルム使いの防水透湿織物を出展する。3層構造のアウトドアジャケットなどに最適な生地で、従来のポリウレタン(PU)フィルム使いに比べ透湿性を2倍、防水性を1・5倍に高めた。

 同素材は、TPEEフィルムを含めてポリエステル100%使いだ。廃棄衣類のリサイクルが可能なモノマテリアル(単一素材)として訴求していく。

 同社は昨年、この素材の試作品を完成させ、顧客から意見を収集。今回の素材はそれを基にストレッチ性を高め、滑らかな手触りに改善した。

 フィルム素材として現在使われるPUや熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、環境負荷が高く、衣類リサイクルに適さない弱点がある。そのため、欧州でTPEEが注目されている。

〈ナイロン66とエコなMS糸/集盛実業〉

 ナイロンとポリエステルのメーカー、集盛実業(ジグシェン)は、コストパフォーマンスの高いナイロン66と、環境に優しいメカニカルストレッチ(MS)のポリエステル糸「Soufflex」(ソフレックス)をアピールする。

 同社のナイロン66の年産能力は2万㌧だ。チップから自社生産することで、コストパフォーマンスを高めている。柔らかい肌触りと色堅ろう度の高さが特徴で、アパレルから産業資材まで幅広い用途の糸をラインアップしている。アパレル向けは、ヨガウエアなどに採用されている。

 ソフレックスはストレッチ性が高いだけでなく、着用時の圧迫感が少ない快適な素材だ。洗濯の際のマイクロファイバーの流出量を通常のポリエステルに比べ80%削減できる。

 欧州連合(EU)ではマイクロファイバー対策が強化されており、同素材は欧州顧客からの注目度が高い。

〈カカオ殻入り機能性素材/佳紡国際貿易〉

 高機能生地メーカーの佳紡国際貿易(グランデテックス・デベロップメント)は、カカオの殻を練り込んだ合繊素材「Secao」(セカオ)を使った織物と編み物を紹介する。SDGs(持続可能な開発目標)や、サステイナブル素材に関心を持つ顧客に向けてアピールする。

 同素材は、日光で自然乾燥させたカカオの殻の粉末で作ったマスターバッチを用いて生産する。カカオ繊維の効果で、生分解性を持つほか、吸水速乾性も高い。ポリエステルとナイロンの双方を展開する。

 同社は昨年から、セカオの展開を本格化した。原料のカカオの殻は、台湾最南端の屏東県の農家から供給を受けている。カカオの殻は従来使い道がなく、破棄されていた。セカオでの再利用は、資源の有効利用と農家の支援につながる。

 同社は昨年から、セカオの糸の開発を加速した。現在はポリエステル、ナイロンともに幅広い糸を展開している。

〈使用済み漁網織物など多彩に/福懋興業〉

 台湾プラスチック・グループ(台塑集団)で、同国の合繊織物製造最大手の福懋興業(フォルモサ・タフタ)は、サステイナブルなナイロンとポリエステルを使った多彩な織物を出展する。

 ナイロンは、使用済みの漁網をリサイクルした素材や、生分解性を持つ素材使いなどをアピールする。

 ポリエステルは、回収ペットボトルをリサイクルした素材と、生地の端材や廃棄衣類のリサイクルした素材使いを打ち出す。工場排気ガス由来の素材を使った織物も出展する。

 三つの用途別(スポーツ、アウトドア、ダウンウエア)の製品サンプルを豊富に用意し、それぞれ使用する織物を訴求する。

 スポーツウエア向け素材は、細デニールのサステな糸を使って滑らかな肌触りにした織物を中心に紹介。ダウンウエア向けは、薄くて軽量なエンボス加工を施した柄物などを出展する。

〈端材リサイクル素材で/旭栄集団〉

 編み物と製品を一貫展開する旭栄集団(ニューワイド)は近年、端材リサイクル素材を使った編み物の開発に注力している。今回展では、自社工場で発生する端材を利用した素材使いやビンテージ風の編み物を訴求する。

 同社は台湾と大陸、ベトナムで編み物を、ベトナムとカンボジア、ケニアで製品を生産している。これらの工場で発生する生地の端材をリサイクルしたサステイナブル素材と、それを使った製品を出展する。同じくサステ素材として、廃棄衣類のリサイクルが可能なモノマテリアル(単一素材)や、生分解性素材を使ったサステな編み物と製品も訴求する。

 細デニールの合繊素材を使い、コットンライクに仕上げた編み物など、新開発のビンテージ風生地の紹介にも力を入れる。

 また中国とベトナムの「スマート製造データコントロールセンター」を活用し、持続可能で高効率の製造を実現していることを紹介する。

〈生産効率高める丸編み機/佰龍機械廠〉

 丸編み機メーカーの佰龍機械廠(パイルン・マシナリー・ミル)は、工場の生産効率と自動化性能を高める「Pailung Smart Knitting Solution」(パイルン・スマート・ニッティング・ソリューション)を提案する。

 今回展のテーマは、「高速サンプル生産と生産パラメータの最適化」。サンプル編みの生産効率化は、多くの編み立て工場にとって課題の一つだ。こうした中、パイルン・スマート・ニッティング・ソリューションは、MES(製造実行システム)などを活用し、生産現場の自動化とスマート化を進め、生産パラメータを最適化する。これにより、サンプル編みの迅速化やサンプル編みから本生産までのリードタイムの短縮を実現する。

〈廃棄ゼロリサイクル糸の生地/力鵬〉

 合繊使いの織物と編み物を生産する力鵬(リーポン)は、グループ会社の力麗(リリー)が開発した廃棄物ゼロリサイクルシステム「CRZ」(クローズド・ループ・リサイクリング・ゼロ・ウェイスト・システム)を通じて生産したリサイクル糸使いを前面に打ち出す。

 CRZは、マテリアルリサイクルのシステムで、自社の工場から回収したナイロンとポリエステルの繊維や、使用済み回収ペットボトルなどをチップに戻し、それを使ってリサイクル糸を生産する。顧客のブランドの縫製工場から回収する端材や、消費者から回収した廃棄衣類をリサイクルすることも可能だ。

 廃棄物を一切出さない「ゆりかごからゆりかごまで」までの循環型生産を実現する同システムと、同システムを通じて生産したリサイクル糸を使った生地を、今回展で前面に打ち出す。