東京支社開設50周年記念特集/生産拠点、市場としての中国は

2002年05月14日 (火曜日)

 世界の工場・中国は、日本の繊維産業の大きな脅威である。しかし、その中国を利用する形で、共生関係を築こうという取り組みも進む。紡績、合繊メーカー、商社の中国での展開は。

技術移転、内販も視野に/紡績、製品事業とリンク

 カネボウ繊維の揚州華鐘毛紡織有限公司は羊毛の紡織仕上げ加工の一貫生産体制で、年産120万メートルの生産能力を有する。また、上海華鐘レナウンニット有限公司は綿ニットの紡績・編み立て・染色・縫製の一貫生産体制で年産2000トン。カネボウ合繊の上海華鐘ストッキング有限公司は年産600万デカのパンティストッキング、ストッキングの製造販売を行う。

 同社のグローバル戦略は、ヨコ軸として適地生産適地販売を、タテ軸として原糸から織り編み、製品までの一貫生産を行うことにある。3工場とも一貫生産を追求した形だ。また、毛紡単独の中山華鐘毛紡有限公司は設備を増強、上海華鐘グループには新しい技術移転も進める。

さらにカネボウ繊維上海事務所を現地法人化し、企画や素材調達、縫製管理など多方面で機能を強化していく考え。カネボウ繊維にとって、製品事業とグローバル化はリンクした戦略であり、中国での一貫生産は日本だけでなく内販、欧米市場も視野に入れる。

 製品事業を意識した展開も盛んだ。シキボウの上海敷紡服飾有限公司はポロシャツ換算で年産108万枚の能力で、多品種小ロット、ファッショナブルな高級品を生産。ダイワボウの蘇州大和針織服装有限公司はTシャツ換算で500万枚の能力で、ニットカジュアルの編み立て、縫製工場だ。メンズコートも10万着を手掛ける。富士紡の富士紡(常州)有限公司はトランクスを中心に年間200万枚を生産。第一紡は中国に協力縫製工場がある。いずれも、製品納入が目的だ。

 日清紡は急速にグローバル戦略を推進中だ。中国では綿合繊糸布を製造販売する常州名力紡織有限公司、綿合繊糸布の製造販売と染色加工を行う杭州一棉有限公司がある。また、今年末から来春に立ち上がるのがベッケンとの綿紡績合弁寧波維科棉紡織有限公司、ヤンガーとの糸染め・織布・整理加工合弁の寧波日中紡織印染有限公司だ。

これらの生産品は昨年9月に開設した現地法人の日清紡上海を通じて販売。また、海外生産品を自社営業に活用するため、4月に繊維事業本部内にグローバルオペレーション推進室を設置している。

 日東紡の日東紡(中国)有限公司は、染色加工・芯地加工・販売を行う。月産180万平方メートルの生産能力があり、150万~160万平方メートルを生産。うち内販は50万平方メートルで、ローカル向けに芯地を展開する上海事務所も設けた。クラボウの三英珠海は、デニム生地の染色・織布・加工を行う。

トスコは昆山トスコでラミーを80単まで紡績できる体制にし、カットソーの生産も行う。「現地にはカットソーの先染めがないため、中国市場で売れている」という。また、複合素材やヘンプラミーも生産。布帛についても試織機を導入した。「現地の有力アパレルにジャケット生地を供給。ラミーの超ファイン分野はトスコという高級イメージを定着させている。上海に昆山トスコの連絡事務所を置くほか、4月には上海で開かれた国際服装展示会にも出展し、中国市場を開拓中」である。

研究開発にも取り組む/合繊メーカーは一貫化へ

東洋紡はアクリル紡績の南通昇陽毛紡有限公司を有する。また、エンプラ品と化成品の販売会社・三東洋行有限公司、生化学診断薬の生産販売・サービス提供の上海科華東菱診断用品有限公司、2次製品販売の上海特維碧貿易有限公司がある。

 東レは南通に長繊維織布染色・販売のTSDとポリエステル長繊維製造・販売のTFNLを設置する。TSDはポリエステル長繊維織物織布2640万メートル、染色3000万メートルの年産能力を有するが、3倍に増設する。

 また、同工場内に東麗繊維研究所(中国)有限公司を3月に設立。中国市場向けとして、中国糸を活用した新規加工糸織物、新規高機能織物や高機能染色加工織物などを開発する。将来的には重合、製糸、糸加工などの機能も充実させた研究開発にも取り組み、先進的な研究開発拠点にする考えだ。

 帝人は南通帝人のポリエステル長繊維織布を月産250万メートルから300万メートルに、同染色を350万メートルから450万メートルに増設する一方で、新潟産地のプロダクションチーム、第一合繊を誘致し、生機生産をさらに22万メートル増やす。これまで日系アパレル向けや3国向け輸出が中心だったが、最近は国内販売を増やし、現地SPA(製造小売業)への展開も強める。

 三菱レイヨンは寧波に湿式短繊維「ボンネル」の合弁工場を04年秋から稼動させる。旭化成も浙江省にスパンデックス「ロイカ」の生産拠点を設けることを決めた。すでに杭州旭化成紡織が「ロイカ」使いの経編み・染色加工場として稼動しており、スパンデックスメーカーがテキスタイルまで一貫供給する体制となる。

商社、上海での機能強化/原料から製品まで提案

 商社は上海での展開が活発だ。三井物産は4月、三井物産上海会社繊維部の衣料部門をアルタモーダインターナショナル(三井物産)に統合、アルタモーダ上海事務所としてスタートさせた。香港・上海の一元管理により、素材情報の共有化やアイテム、価格ゾーンに合わせた適地生産体制が進む。

 三菱商事のトレディアファッションは、上海事務所を拠点にしながら、昨年青島に事務所を開設。今年は大連にも事務所を設け、生産エリアの北上作戦を進める。蝶理は二次製品を扱う蝶理時装(上海)を設立。内販を視野に現地SPAとの取り組みを強める。

トーメンの「上海松涛紡織品公司」は、アセテート織物の織布・染色で年産60万疋を生産。トーメンホットライン香港は生産管理・販売会社として活動する。また、東棉(上海)の中に繊維部門も置き、織布メーカーや染工場を開拓。丸紅は原料の丸紅上海会社繊維部、テキスタイルの丸紅繊維亜州(MTA)上海事務所、二次製品のパスポートファッション上海事務所を置く。中国の流通大手、上海一百集団と合弁初の貿易権を持つ卸売会社として上海百紅商業貿易を設立。外資系メーカーから仕入れ、上海地区を中心とする量販店やチェーンストア、コンビニエンスストアなど小売店に卸す。

伊藤忠商事の伊藤忠繊維(上海)有限公司は、原料から二次製品までの垂直一貫で、ヤンガーやベッケンなど現地大手企業とも取り組む。新興産業は上海事務所の機能を強化する。縫製・納期管理だけでなく、企画提案、素材からの一貫型ビジネスを志向する。