ごえんぼう

2024年09月18日 (水曜日)

 井上靖の小説「晩夏」は、「私は八月の終りから九月の初めへかけての、夏の終りの極く短い何日かが好きである」の一文で始まる▼夏が去り、初秋へと移ろう季節の変化を効果的に取り入れながら、海辺を舞台に、少年の少女へ寄せる淡い思いが描かれる。1952年に発表された作品だが、70年余り経った現在とは季節感が異なる。現在の8月末は、夏真っ盛りだ▼特に今年は9月に入っても各地で猛暑日が続出。気象庁が12日に発表したこの先1カ月の予報によると、10月中旬まで異例の残暑が西日本、東日本で続く可能性がある▼暑い夏が長期化する中、三陽商会が今年から夏物を5~9月の5カ月販売するスケジュールに転換するなど、アパレルの販売方法や商品企画にも変化が見られる。地球温暖化の進行で暑くて長い夏の常態化も懸念されている。従来の四季を前提とした考えが通用しづらい世界に一段となりつつある。