合繊メーカー系商社/高まる収益力/機能高度化、独自ビジネスなど鍵
2024年10月17日 (木曜日)
合繊メーカー系商社の収益力が高まっている。東レインターナショナルが進行中の中期経営課題で掲げた利益目標を上回る水準で推移し、帝人フロンティアは基礎収益として100億円の事業利益を計上する力が付いたと話す。これまで取り組んできた施策が実を結んだ形と言えるが、「機能の高度化」「独自ビジネス」「海外オペレーション」といったキーワードが浮かび上がる。(桃井直人)
為替変動や原材料価格高、地政学リスクをはじめ、先行きの不透明感は強い。ただ、足元の事業環境について「悪くない」とする合繊メーカー系商社は少なくない。気候変動や安全・安心意識の高まりなどから従来以上に高度で多岐にわたる機能が求められ、差別化された合繊の出番が増えると捉えているためだ。
各社の2024年4~9月業績も堅調な動きを見せる。東レインターナショナルは、ファッション衣料や産業資材が比較的好調で増収増益を見込み、利益は中経の目標値を上回ると予想する。帝人フロンティアは4~6月期で上方修正した利益計画に沿って進んでいる。旭化成アドバンスも増収増益を見込んでいる。
各社の収益を押し上げているのが、機能の高度化や独自ビジネス、海外だ。東レインターナショナルは、機能の高度化を図り、短納期対応を可能にした。生産場所やデジタル技術を組み合わせることで通常の納期と比べて2、3割の短縮に成功し、スーツのオーダーメードで新たな商売が始まった。
独自のビジネスでは、アップサイクル事業にも進出した。縫製拠点などで出る余剰生地を利用して製品を作り、廃棄物削減を図る取り組みで、プラットフォームブランド「TSUTSU」(ツツ)も立ち上げた。第1弾商品は衣料用ナイロン6の余剰生地を使った傘。アイテムは順次増やす。
25年3月期に145億円の事業利益(帝人の繊維・製品セグメントの数字)を計画している帝人フロンティアは、100億円を安定して計上できる実力は付いてきたとの認識を示す。衣料繊維が良好な動きを見せているが、その中でもポリエステル長繊維を中心とする化合繊織・編み物を製造・販売する中国拠点の南通帝人がけん引役を務める。
産業資材では、インテリア・寝装関連の生活製品本部でテレビ通販などが順調に推移する。冷感寝具や除湿剤などが良好な動きを見せ、毎年収益が拡大していると言う。衣料繊維、産業資材ともに下半期以降も立てた計画に着実に取り組む。
旭化成は、今年度が3カ年中期経営計画の最終年度となる。上半期(4~9月)は中計で掲げた当初の数字には届いていないとするものの、繊維事業がけん引役となって前年同期比増収増益を確保できる見通しで、この3年間で地力が付いてきたとの認識を示す。
中計との数字面での乖離(かいり)について、旭化成との連携によるビジネスが中計に近い姿だったのに対し、独自で切り開くビジネスが十分ではなかったと分析。次の中計では独自ビジネスを改めて強化すると同時に、繊維や樹脂、化学品の壁を越えたビジネスの構築を目指す。