東レの長繊維事業 衣料用ナイロン構造改革

2024年10月22日 (火曜日)

 東レの長繊維事業部は、2024年度下半期(24年10月~25年3月)から衣料用ナイロン6長繊維の構造改革に着手する。定番糸の需要減退で工場稼働率が低下していることから、国内工場への設備投資で多品種・小ロットに対応した生産能力を向上させる。

また、タイ子会社は衣料用ナイロン6長繊維から撤退する。

 衣料用ナイロン6長繊維は、スポーツ・アウトドア用途が好調だが、高密度織物向け細繊度糸が多いため生産性の面から生産量に限りがある。一方、定番糸が多いため数量面で中心的役割を果たしてきたランジェリー・ファンデーション用途とパンティーストッキング用途は近年のライフスタイルの変化で需要減退が著しく、今後も劇的な回復は難しいとの見方が強まる。このため衣料用ナイロン6長繊維は生産数量の拡大・維持が難しい状況となり、収益性の低下が課題となる。

 「来期から新しい中期経営課題がスタートするが、衣料用ナイロン6長繊維は今年度下半期から先行して構造改革に着手する」(足立大輔長繊維事業部長)。国内は愛知工場(名古屋市西区)と石川工場(石川県能美市)で生産しているが、愛知工場が多品種・小ロット生産に対応した設備となっているのに対し、石川工場は大量生産型の設備が中心。石川工場も多品種・小ロット生産に対応した体制にするための設備投資を決めた。

 海外はタイ、インドネシア、中国で生産しているが、タイ子会社のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)での衣料用ナイロン6長繊維生産は24年12月末で停止し、産業用に特化する。衣料用は日系向けを含めたランジェリー・ファンデーション用途が中心で、こちらも需要の減退が激しく、既に生産規模を縮小していた。

 構造改革によって衣料用ナイロン長繊維は「生産品種、輸出を含めた売り先、用途を変えることで事業再構築を進める」。既に衣料用ポリエステル長繊維は特殊ポリマーや独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」の活用によって高付加価値糸のウエートが高まるなど改革が成果を上げている。衣料用ナイロン長繊維も同様に事業高度化に向けた構造改革に取り組む。