「ITMAアジア」で見た最新動向/差別化とコスト削減に焦点/市況低迷背景に

2024年10月23日 (水曜日)

 14~18日の5日間、中国・上海で開かれた繊維機械の国際見本市「ITMAアジア+CITME2024」では、付加価値品が生産できる最新機と、省エネ・省人化・省工程の性能を高めた機械が注目を集めた。国内外のアパレル市場の低迷と、素材メーカー間の競争激化を背景に、差別化と生産コスト削減のニーズが同時に高まっている。(岩下祐一)

 今回展の展示面積は約16万平方㍍、22カ国・地域から約1700社が出展した。出展社数は昨年開かれた前回展(1500社超)を上回り、新型コロナウイルス禍前の18年展(約1700社)とほぼ同等となった。出展者の分野別構成比は、染色加工機32%、紡績・合繊製造設備27%、編み機16%、織機14%、不織布製造設備・検査設備ほか11%で、前回展に比べ、染色加工機の割合がやや高まった。

 同展は2年に1回開かれているが、コロナ禍の影響を受け、22年に開催予定だった前回展は1年延期され、23年11月に開かれた。そのため、今回展は2年連続となり、来場者数が減ることが懸念されていたが、「開催2日目から昨年を上回る勢い」(主催関係者)となった。中東や西アジアを中心に海外来場者も目立った。

 中国の景気は昨年から減速し、消費が冷え込んでいる。特徴のないものが売れなくなり、差別化した素材が求められるようになっている。そのため、合繊メーカーなどが差別化シフトを加速している。

 東レグループの東麗合成繊維〈南通〉は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)使いのバイメタル構造糸が好調だが、ライバルメーカーの追随を受け寺澤裕之董事長は「製品のライフサイクルが年々短くなっている。引き続き事業を拡大していくためには、今まで以上に差別化した原糸が必要だ」と言う。

 今回展では、こうした流れを受け、付加価値品を生産するための最新機への引き合いが強まった。合成繊維製造設備のトップメーカー、TMTマシナリーのブースは、実機を置かず、映像を使った出展にとどめたにもかかわらず、多くの来場者があった。ある地場ナイロン大手メーカー首脳は、自ら来場し、難易度の高い原糸の生産設備について同社スタッフに相談していた。

 一方で、景気低迷で経営が苦しい紡績関係は、省エネや省人化への関心がより高かった。

 紡績の中でも、特に苦戦が目立つのが綿紡績だ。綿紡績上場企業の24年1~6月業績は、大部分が前年同期比減益となった。背景は、市況の低迷と欧米企業の新疆綿ボイコットに加え、中国国内での競争激化がある。

 新興メーカーの数智世界工業科技(DiW)が今年、新疆ウイグル自治区と四川省の大型工場で32番手と40番手の定番品に特化し、大量生産する方式で台頭している。これにより、同番手が値崩れを起こし、「他社がこれに手を出せなくなっている」と、紡績関係者は明かす。

 村田機械の中国内販は現在、渦流精紡機「VORTEX(ボルテックス)」がけん引している。今回展では最新機「同870EX」を出展し、注目を集めた。

 導入を検討する企業が注目しているのが、同機の工程短縮などによるコスト削減効果だ。同社営業担当者は「市況が厳しい中、各社が省エネやコスト削減に目を向け、リング精紡機から乗り換えている」と話す。