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大手学生服メーカー/価格改定が急務/早期対応で安定供給も重視

2024年10月24日 (木曜日)

 性的少数者(LGBTQ)への配慮から、従来の詰め襟とセーラー服を、性差を感じさせないブレザーへと制服をモデルチェンジ(MC)する動きが全国的に広がっている。大手学生服メーカー3社はこの動きに対応し、MC校からの受注を獲得している。一方で、モノ作りにおいてさまざまなコストが上昇。3社の利益を圧迫する要因となっており、各社は収益改善のために、価格の改定を急ぐ。来春も高水準のMC校数が見込まれる中、安定した納品体制を敷くことも引き続き求められる。(秋山 真一郎)

 トンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニーの大手学生服メーカー3社の2024年連結業績(明石スクールユニフォームカンパニーは23年12月期)を見ると、各社は増加するMCに対応し、増収を確保した(表参照)。一方、原材料費や物流費、人件費など、モノ作りにおけるコスト上昇が直撃。本業のもうけを示す営業利益では、トンボと明石スクールユニフォームカンパニーが減益を余儀なくされたほか、菅公学生服は営業損失を計上した。

 各社はこれまでも業務や生産の効率化など利益確保に向けた自助努力を重ねてきたが、それも限界を迎えつつある。そのような中、3社は製品の値上げに向けた動きを本格化させている。

 今期(25年6月期)の重点施策について「価格改定」と言い切るのはトンボの藤原竜也社長。「価格改定を進めなければビジネスモデルが成り立たなくなる」とし、3年計画で改定を進めていく方針だ。9月末の段階で今期に目標とする「7割ほどの学校の理解をもらえている」とする。

 菅公学生服の尾﨑茂社長も「利益改善には価格改定しかない」と強調。値上げに向けて、交渉を徐々に進めている。明石スクールユニフォームカンパニーでは価格改定に向けて「先頭を切って動いた」(河合秀文社長)。河合社長は「イメージしている金額の7~8割は改定ができている」とし、引き続き顧客の理解を得ながら価格改定を進める。

 20年ごろから活発化しているMCの動きは来春も継続する見込みだ。ニッケによると、25年入学商戦のMC校数は9月末時点で710校に達する見通し。23年には748校と過去最多を更新、24年はそれに次ぐ735校となったが、来春もこれらに匹敵する高い水準をキープしそうだ。

 MC増加に伴い、昨春は一部で納品遅れが発生したが、今春は各社が納品第一に動いたことで比較的安定した供給ができた。来春に向けても、新規注文の締め切り前倒しなど、早めの対応に注力しながら、安定生産、納品につなげる。