繊維ニュース

綿紡績大手 利益改善進むも“もう一歩”

2024年11月14日 (木曜日)

 綿紡績大手の4~9月期連結決算が出そろった。繊維事業は市況悪化で減収が目立つ。一方で利益面では物流費や原燃料の高騰、円安によって厳しい環境が続いたものの、ユニフォームなどで価格改定が進み、安定した黒字化、黒字浮上まで“もう一歩”の結果となった。一部の企業では値上げが追い付かず、コストアップの波に苦しんだ。

 クラボウは減収も2期ぶりに営業黒字化した。糸は国内インナー向けが前年同期並みも、ブラジル・タイ子会社の販売堅調で増収。テキスタイルは国内や中国子会社ともカジュアル素材の受注減で減収。繊維製品は暑熱リスク管理・体調管理システム「スマートフィット」の販売が増えたものの、カジュアル向けの受注減で減収だった。

 シキボウは、ユニフォームやニット製品の不採算部分を見直すとともに、原糸販売の国内産地向けの低迷などで減収だったが、営業損失は改善。中東民族衣装向け生地輸出では織布・染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)の設備を増強し生産量を拡大。ユニフォームも価格改定が進み、下半期からの黒字浮上が見えてきた。

 日東紡の資材・ケミカル事業は、増収も原材料などコストアップの影響を受け大幅な減益。繊維分野だけを見ると芯地を中心に第1四半期まで販売が好調だったものの、酷暑の影響で受注が鈍化。紳士服郊外チェーン向けの苦戦もあり、売り上げは前年同期並みだった。利益面は値上げを進め、黒字を維持しているものの、コストアップが厳しく減益だった。

 富士紡ホールディングス(HD)の生活衣料事業は増収も大幅な減益だった。繊維素材は物流費や原燃料の高騰、為替によって厳しい環境。インナーの「BVD」など繊維製品は、量販店の店舗減少や消費者の節約志向によって苦戦した。ウェブマーケティングの強化に加え、ネット販売商品を拡充、ネット販売での効果的な商品訴求に取り組んだ。高級インナー「アングル」では高品質な日本製品が評価され、海外向け販売を伸ばした。

 日清紡HDの繊維事業の1~9月期連結決算(表は1~6月期)は、売上高274億円でほぼ横ばいも、営業損益は9400万円(前年同期は4億9200万円の営業損失)と赤字幅を縮小。東京シャツを含むシャツ事業とユニフォーム事業は市況回復の遅れから減収・損失拡大となった一方で、ブラジル拠点は旺盛な需要に支えられ、増収増益だった。