別冊ユニフォーム総合(5)/オフィス・サービスウエア/素材、デザインに重き置く

2024年11月15日 (金曜日)

 2024年のオフィス・サービスウエア市況は、引き続きオフィスウエアが苦戦する一方で、サービス業向けはインバウンド需要の回復や賃上げの動きに比例するように活況だ。中でもホテルや観光施設、カーディーラー、エステティックサロンの好調が目立つ。別注案件が増加傾向にある点も新たな動きとなっている。

〈接客要素の取り込み鍵〉

 オフィスウエアは、金融機関を中心に広まる制服廃止の流れや働き方改革の進展に伴い、特に内勤向け商品に回復の兆しが見られない。一方でエンドユーザー数では内勤向けウエアに及ばないものの、接客要素を取り入れた商品やジェンダーレス対応のペアユニフォームといった新たなニーズに応えた商品で需要創出を図る動きが活発化している。

 ビジネスシーンでの接客を想定しドレッシー要素を取り入れた接客ウエアは、カジュアル感のあるサービスウエアと一線を画したデザイン訴求が特徴だ。制服の持つ役割を生かしながら従業員の多様性や個性を尊重するラインアップに人気が集まる。

 他に、オフィスウエアの商品企画でポリエステル100%素材の採用が増えている。以前はウール・ポリエステル混や、ポリエステル・レーヨン混が多かったが、ポリエステル100%でも十分良い質感を出せるとして、新商品への混紡素材の採用が減少している。環境配慮設計に対応するため、モノマテリアル(単一素材)による商品開発が意識される中、ポリエステル100%素材による企画が今後さらに増える可能性がある。

〈「和」テイスト人気〉

 日本政府観光局によると今年1~9月の訪日外国人旅行者数は前年同期比54・7%増の約2688万人で、新型コロナウイルス禍前の19年同期比も10・1%上回る過去最多水準で推移している。

 インバウンド消費の恩恵を受ける宿泊・観光施設、飲食業では、人手不足に悩まされながらも接客向けユニフォームの新調やリニューアル需要が盛んだ。中でも「和」テイストを取り入れたデザインのウエアが好印象を与えるとしてニーズが高まっている。

 インバウンドとの接点が多いサービス業では、日本の文化的雰囲気をアピールすることも来客を増やす手段になる。その一つとして注目を集めるのが和のテイストをあしらったおもてなしウエアだ。

 特にホテルやダイニングレストランがブランディング戦略に絡めるケースが多く、ドレッシーな洋装をベースにしている点が特徴。カジュアルシーン向けに和風デザインにアレンジしたシャツやエプロンといったアイテムもある。いずれにしても着物をはじめとする本格和装とは一線を画す。

 これらのニーズを捉えるべくユニフォームメーカーはラインアップ拡充に乗り出した。カーシーカシマ(栃木県佐野市)は、和の雰囲気を取り入れつつモダンな装いに仕立てた接客向けユニフォーム「カサネ」シリーズを24秋冬で打ち出した。着物の重なりを表現するアシンメトリーなサテン襟や、帯結びをほうふつとさせるディテールなどを機能や動作性を損なわない範囲で取り入れたアイテムをそろえる。

 ハネクトーン早川(東京都千代田区)は「和こころ」シリーズの新作で、日本の伝統色をイメージさせるボルドー、グレー、ネービーの3色で、格調や華やかさを醸し出す。シャンタンの部分使いでさりげなく和のテイストを表現。ウエストやスリット部分のデザインが和服を思わせるようなワンピースのほか、ジャケットをそろえる。

 ボンマックス(東京都中央区)は、ジェンダーレスへの対応という視点から、着物の前合わせを着想源とした和モダンなデザインのユニセックスジャケット「ボーダーレスビューティー」を24秋冬で投入。

 サーヴォ(同)は飲食接客サービス向けの新シリーズ「ころもて」を今年から展開。和のスタイルをモダン調に仕立て上げた和洋折衷デザインのショップコートやエプロン、シャツなどをそろえ、インバウンドの取り込みを図る飲食業のユニフォームリニューアル需要を狙う。

〈大阪・関西万博/日本館アテンダントの制服決定〉

 来年開催の大阪・関西万博に出展する経済産業省の日本政府館(日本館)のアテンダントユニフォームが決まった。約270人が着用する。

 「日本の美意識を纏う」をコンセプトにクリエーティブデザイナーの中田優也氏が手掛けた。着物の構造を元に余白を大切にする日本的な感覚を体現したと言う。カラーはダークグレーがベース。アイテムは、東レの協賛を得たジャケット、ベスト、カットソー、パンツ、スカーフ、風呂敷のほか、帝人フロンティアのバッグ、マキシン(神戸市)のキャップ、ハットなど12種。いずれも年齢、性別を問わず着用が可能。

 植物由来ポリエステル繊維や再生ペットボトル原料繊維などの環境配慮素材を採用し、使用後にリサイクルしやすいようボタンやファスナーを使わないモノマテリアル(単一素材)で作り上げた。

 万博終了後に回収し、27年に横浜で開催の国際園芸博などを想定して再商品化も視野に入れる。