LIVING-BIZ vol.112(6)/Pick-up nishikawaのスリープテック/眠りの見える化で健やかな生活・社会を
2024年11月19日 (火曜日)
nishikawaは、睡眠アプリ「goomo」(グーモ)、これと連携する高精度センシングマットレス「[エアーコネクテッド]SXマットレス」を開発、10月中旬からグーモの無料ダウンロードと同マットレスの販売を始めた。「よく眠り、よく生きる。」を企業ステートメントに掲げる同社。強みのスリープテックによる睡眠の可視化を通し、健やかな生活・社会の実現を目指す。
〈広がる可視化領域〉
グーモは“よい睡眠と新しい1日をつなぐスマホアプリ”として、自社研究機関の日本睡眠科学研究所が長年蓄積した知見を基に、睡眠スコアやアドバイスを提供する。睡眠スコアは睡眠時間、入眠潜時、中途覚醒回数、睡眠効率の4項目・100点満点で算出される。同スコアと日中の行動記録から利用者の眠りの特徴、改善のためのアドバイスを伝える。
そうした睡眠アプリは既にあるが、睡眠中の心拍・呼吸・体動を検知するエアーコネクテッドSXマットレスと連携することで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスク測定や自律神経バランスの可視化も実現。呼吸によるSASリスクの測定、心拍による自律神経の見える化は業界初の機能実装だと言う。
睡眠スコアが優れない場合は、眠りの悩みを気軽に相談できる、同社が展開する近所の「ねむりの相談所」を紹介することも。エアーコネクテッドと連携させ、SASなどの疑いがある人は近くの睡眠外来を探すこともできる。
自律神経バランスの可視化とは、自律神経の状態からその日の気分(ルンルンかイライラか)、体調(元気か不健康か)などを表示する。これを基にファッションや美容、運動、食、医療などの異業種との連携も推進する。実現すれば、「今日は緊張しているので、この色の服、コスメティックを使えば気分が落ち着きますよ」という具合に、気分や体調に合った商品・サービスの提案も可能だ。
〈家電とも連携〉
グーモは睡眠記録とアドバイスに加え、「睡眠コンテンツ」「タレントボイス」「スマートアラーム」「音声記録」といった機能も備える。睡眠コンテンツでは、入眠前にリラックスできるヨガやストレッチなどの動画、瞑想(めいそう)といった音声コンテンツなど豊富に用意。タレントボイスは著名人の声で就寝や起床を促す。メジャーリーガーの大谷翔平選手、声優の梶裕貴さんらの声もある。
スマートアラームは、設定した起床時刻より少し前の眠りの浅いタイミングで作動し、心地よい目覚めを促す。音声記録では、睡眠中のいびきや室内の音などを記録。10~20秒で、就寝中の音量が大きかった10件を確認できる。
その他、エアコンや照明などスマート家電との連携で就寝・起床時の寝室環境を整えたり、睡眠情報を最大5人と共有できる点を生かして別居を含む家族の眠りと健康を見守ることもできる。
〈寝心地もデータ取得も〉
エアーコネクテッドSXマットレスは、最上級モデルであるエアーSXマットレスの寝心地はそのままに、より高精度なバイタルデータの取得を可能にした。睡眠アプリでは測れない睡眠深度も測定する。
これを可能にしたのが「圧電組紐(くみひも)」の非接触型センサーだ。圧電組紐は、圧力を加えると電気エネルギーを発生するポリ乳酸繊維を圧電体に使用し、導電繊維と組み合わせて組みひも状にしたウエアラブルセンサー。関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人フロンティアが共同で開発を進めている。
nishikawaオリジナルのセンサーは同技術を用いた厚さ約2㍉、0.004秒に1件のデータを取得する高精度なもので、マットレスの胸部分に内蔵した。シングルサイズで20万9千円。ねむりの相談所(全国100カ所超)を備える百貨店や寝具店、直営店などで順次販売している。
〈nishikawa、西川ローズ/航空宇宙分野へ提案強化/課題解決型製品・サービスで〉
nishikawaは、グループの睡眠・寝具に関する知見と素材を生かし、航空宇宙分野への提案を強めている。10月、4年に1度開かれる「2024国際航空宇宙展」にグループ会社の西川ローズ(滋賀県甲賀市)と共同で初出展(写真)。宇宙ステーション向けと産業従事者向けでソリューション提案し、高い評価を得た。
宇宙ステーション向けでは、乾燥、臭い、微小重力などの生活課題解消を推進。乾燥対策では、美容睡眠ブランド「ニューミン コスメティックスシリーズ」の生地を用いた肌着を打ち出した。ビタミンEの潤い成分を繊維に練り込んだ生地で、摩擦や体温に反応し保湿する。同成分の配合を通常の4倍にし、保湿力を高めた。
十分な体の洗浄、着替えができないことによる臭い対策では、消臭わたを挟みこんだ「フレックスニット」のバンダナや靴下を開発した。靴下のソールは厚めで摩耗にも強い。フレックスニットはベロクロテープと親和性があることから、腰ベルトも提案。はさみやペンなどの小物にベロクロテープを貼りフレックスニットの腰ベルトに付ければ、微小重力下でも扱いやすい。
フレックスニットは、わたや不織布などの基布に、上下から糸でステッチして仕上げた複合生地。樹脂や接着剤といった添加剤不要のため機能性繊維の性能を十分に引き出し、耐久性も高い。立体成形も可能だ。
産業従事者向けでは、仮眠室やコワーキングスペースを訴求した。自動車内装材や高速道路・線路の遮音壁などに多用される吸音材「サイレントシーン」を壁面などに使用。仮眠に適した傾斜の「エアー」マットレス、睡眠アプリ「グーモ」、机上で使える「コネムリ」の枕などを備える。仮眠室はANAが導入済み。適切な仮眠によって24時間体制の飛行場・航空会社で働く人の健康、ヒューマンエラー削減、生産性向上を後押しする。
コワーキングスペースでは「エアーコネクテッド」マットレスのセンサーを用いたクッションを参考出品。将来的には航空管制塔など業務中のバイタルデータを基に、グーモから注意力低下のアラートを発し、安全運航に役立てたい考えだ。