北陸ヤーンフェア レビュー(1)
2024年11月27日 (水曜日)
機能性や感性前面に
今回の北陸ヤーンフェアで合繊メーカーは独自の開発糸を幅広く紹介した。昨年に続いてサステイナビリティーをベースにしながらも、より糸の特性の訴求に力を入れた。
東レは、ポリマー特品と紡糸技術に焦点を当てて出展した。紡糸技術では繊維せんいの細さや形をナノレベルで制御する複合紡糸技術「ナノデザイン」を紹介し、収縮差がある3成分を使って独特の表情を実現した「マイクロシルデュー」などが注目された。
ポリマー特品では、酸化チタン成分を業界最高水準で入れたというギガダル糸や吸放湿ナイロン「キュープ」を紹介した。海外市場でも注目されているキュープはレギュラータイプに加えてフルダルや異形断面、極細タイプなど幅広いバリエーションをそろえる。
旭化成アドバンスはジアセテート長繊維「ナイア」のほか、カバーリング糸の提案に力を入れた。カバーリング糸はアウターなどレッグ以外にも用途を広げていく狙い。
ブースでは生分解性ポリエステル「シクロ」などサステ素材使いを含めて幅広いカバーリング糸を紹介した。短繊維使いでは、芯にスパンデックス「ロイカ」を使い、鞘にキュプラ繊維「ベンベルグ」やジアセテート短繊維「セルン」、綿を使った3タイプを出品した。ともに鞘素材の混率は91~92%。また、特殊ストレッチ糸として芯にPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、ポリエステルを使い、鞘に「ナイア」を使った糸やリサイクルナイロン100%糸などをそろえた。
ナイアはカジナイロン(金沢市)との共同開発による複合加工糸を紹介。光沢感やドレープ性などの特徴を持たせ、丸編みなどに展開していく。
帝人フロンティアは今回、機能を体感できる素材の提案に力を入れた。ブースでは接触冷感などの夏用と、保温や発熱などの冬用に分けて展示。夏用では「涼しや」「カルキュロ」「ウェーブロン」「クールセンサーEX」、冬用では「サンバーナー」「エアロカプセル」「オクタ」「ソリスト」などを訴求した。
旧東邦テキスタイルの流れを組む紡績糸の提案にも力を入れ、バルキー性などが特徴の「マーフィル」などを訴求した。マーフィルは、綿とは異なる表情が注目され、Tシャツやトレーナーなどのアイテムで採用が進んでいるという。
東洋紡せんいは、綿、ナイロン、ウールと幅広く独自素材を紹介した。合繊ではリサイクルナイロン「ループロン」などを紹介。綿は特殊紡績技術を軸に、機能性を付与した綿糸やリサイクル綿糸「さいくるこっと」などを紹介した。
さいくるこっとは好評を得た商品の一つ。回収した繊維を反毛ではなく新たな開繊システムで処理するため、高品位、細番手化、リサイクル原料の高混率化を実現している。リサイクル綿100%使いも可能。
ウールは、御幸毛織の長短複合糸「マナード」を引き続き提案し、トリアセテート×ウール糸などが注目を集めた。出展を重ねる中、北陸へのウールの提案が着実に進んでいる。
ユニチカトレーディングのブースでは、シルクのような風合いと機能性を両立させたポリエステル長繊維「シルミードライ」などが好評を得た。今回は改めて紡績の提案にも力を入れたが、日本の撚糸スペース縮小の対応として、精紡強撚糸への注目も高かった。
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11月13~14日石川県産業展示館4号館(金沢市)で開催された糸の総合展示会「北陸ヤーンフェア2024」は、前年(福井開催)に比べ14社増に当たる78社・団体が出展するなど過去最多を更新した。来場者数も前年(3239人)を上回り、3507人と過去最多となった。出展者の手応えなど盛況だった今回展を振り返る。