帝人フロンティア 素材で“何か新しい”を
2024年12月03日 (火曜日)
帝人フロンティアは、アウトドア・スポーツ用途の素材開発で環境対応、外観・風合いなどの新質感、合繊ならでは機能性付与で市場を深耕する。「オクタsf」「ミクセルNP」といったプロモート素材を充実させ、独自性を追求し“何か新しい”質感、機能性によってこれからの需要を捉える。
アウトドア・スポーツ用途では環境配慮への意識の高まりで、素材の選択肢が以前に比べ狭まり、顧客が「悩んでいる」「妥協している」ケースが増えてきた。同社ではリサイクルやマイクロプラスチック対応、PFAS(有機フッ素化合物)フリーなど環境に配慮しつつも、何か新しい付加価値を付与した素材群を充実させ、販促に力を入れる。
オクタsfは中空8フィン断面の極細原綿による紡績糸で、膨らみのあるソフトな風合いと、優しく肌触りの良い着用感を実現。特殊な原綿だけに「紡績が難しい」が、50%混まで供給できるようにするとともに、100%の開発にも成功した。36ゲージのハイゲージ化もできる。
深みのある色合いときめ細やかなシャンブレー外観が特徴の「ミクセルNP」ではポリエステルとナイロンの機能を融合。トレンドの「落ち着いた光沢感」も表現できる。
他にも起毛しない高密度立体構造体編み地「ポリリズム」や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」を使った新質感スパン調編み地「ソロテックスリベルテ」の販売を強化。新開発の接触冷感と汗のべたつき防止機能を両立させた特殊構造体編み地「クールシェル カラット」も含め、国内外へ販路を広げる。
これまでスポーツ向けでは、高バランス編み地「デルタ」シリーズの販売が多かった。最近ではポリリズムやコットン調ポリエステル「アスティ」が「新しい触感として受け入れられてきた」ことから、加工機を改造しながら増産に対応する。オクタも売れ筋になりつつあるが、ダブルラッセルを真ん中で裁断する特殊な製造方法から「日本でしか生産できず、ブレークスルーへの悩みを抱えている」と言う。
通期も増収見通し
帝人フロンティアの2024年度(25年3月期)のスポーツ素材販売は、前期比増収を見込む。国内向けが「インバウンドの効果で全体的に底上げしている」(衣料素材本部の白石和男テキスタイル第二部長)ことに加え、欧州向けの復調が寄与しつつある。利益面ではさまざまなコスト上昇から「売り上げほど伸びていない」として横ばいから微増を見込む。
国内向けは「想定よりも良い」。ただ、産地の協力工場では人手不足、労務コストの上昇が深刻化しており、受注の「“谷”をくらうとリカバーできない構造になっている」と指摘。物流、倉庫のコストも上昇しており、今後も「価格改定をしていく必要がある」。
売り上げの7割を占める海外向けは米国が前年並みだが、欧州が復調基調にあり、円安の追い風も受ける。