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カーペット/“作れない時代”見据え対応/糸や織機の内製化も

2024年12月16日 (月曜日)

 カーペットは、繊維製品の中で国産比率が比較的高いアイテムの一つだ。しかし、国内生産量は減少傾向にあり、サプライチェーンのほころびも懸念される。将来を見据えて、持続的なモノ作りができる体制構築を進めるカーペットメーカーも見られる。(長尾 昇)

 財務省・貿易統計やカーペット情報企業、IDBのタフトカーペット実態調査によると、2023年の国産カーペットの生産量は4813万平方メートル、輸入カーペットは8035万平方メートル。国産比率は37・4%に上る。国内衣類市場での23年の輸入浸透率(数量ベース)98・5%と比べると、国産が健闘している分野だ。一方でカーペットの国内生産量は減少傾向が続いており、18年対比で23・0%減少している。国内市場の縮小の影響が大きい。

 国内市場の縮小も踏まえてカーペット用途から撤退する素材メーカーも目立つ。ここ数年で最も業界に衝撃を与えたのが、インビスタジャパンのカーペット用ナイロン66糸からの撤退だ。国内のカーペット用ナイロン長繊維は、同社と東レの2社が全体の90%程度のシェアを占めてきた。インビスタジャパンは19年末にコントラクト向け白糸供給から撤退して原着糸に経営資源を集中。供給量は減少傾向にあったが、それでもカーペット用ナイロン長繊維の30~40%のシェアを持ち、撤退の影響は大きかった。

 東リは、安定供給も目的に滋賀工場へナイロン紡糸機を導入し、ナイロン原糸の一部内製化を押し進める。21年8月に1号機、23年4月に2号機、3号機も今秋稼働した。3機ともカーペット用原着ナイロン6糸を生産し、年間生産能力は計1800トンに上る。3号機の稼働で内製化率は現状の10%台後半から25%程度に上昇する。

 同社は中長期的にナイロン糸の内製化率を高める方針を示しており、4号機も既に発注済み。26年3月期中の稼働を目指す。

 織カーペット製造の堀田カーペット(大阪府和泉市)は、国内に約20台しかないウィルトン織機を、試作機を含めて8台所有する。多様な糸や大小さまざまなループが使えるなどテクスチャーで意匠を表現でき、高級ゾーン向けで活躍する。一方で堀田将矢社長は「作れない時代」になりつつあるとの認識を示す。

 同織機を製造するベルギーのバンデビーレ社は、00年代に発売した新機を最後に開発を止めている。堀田社長が把握する範囲では、ほかにウィルトン織機メーカーはない。同社のウィルトン織機は1970~80年代に中古で導入した織機が最も新しく、大規模なメンテナンスが必要になっている。

 織機をメンテナンスするため、織機1台を止めても利益を出せる体制を数年かけて模索。メンテナンスでは織機を解体してオーバーホールし、その際に交換が必要な部品は自社で製造することも視野に入れる。メンテナンスを重ねることで織機を作る技術も身に付ける狙いだ。