特集 環境ビジネス(7)/進展を見せる各社の環境への取り組み/伊藤忠商事/丸紅/一村産業

2024年12月17日 (火曜日)

〈混紡品の再資源化が実現/制服中心にリサイクル拡大/伊藤忠商事〉

 伊藤忠商事が推進する、廃棄衣料を使用済みプラスチックとともに再資源化する「アルケミアプロジェクト」は、循環の輪を多様な分野に広げている。同プロジェクトでは、樹脂加工・機能性化学大手のレゾナック(東京都港区)と協力関係を結び、同社のガス化処理技術を活用して廃棄物を低炭素アンモニアなどの化学製品に再生させる。この手法により、従来のケミカルリサイクルでは困難だった混紡品の再資源化が実現した。

 伊藤忠の繊維カンパニーは、回収の専門業者を通じてアパレル企業や自治体、小売業者から集めた廃棄衣料から固形燃料RPAFを生み出す。RPAFをレゾナック川崎事業所(川崎市)のプラスチックケミカルリサイクルプラントに供給する。

 ここでRPAFを原材料にしてアンモニアを作り出す。アンモニアからは肥料やアクリル繊維原料などができる。精製工程で発生した二酸化炭素(CO2)を回収し、ドライアイスや液化炭酸に再生させることも可能だ。

 2023年のプロジェクト開始以来、リサイクルの実績を着実に積み重ねてきた。住宅、金融機関、物流、空港関係と幅広い業種の企業から使用済みのユニフォームを引き取り、形を変えて再び資源として有効活用できるようにしている。ユニフォームについては、海外企業から受注した事例も生まれた。

 この循環システムの活用を広げるため提案力の強化を進める。

 顧客が再資源化までの進行状況や工程で排出されるCO2の量などを確認できるシステムを構築し、過程の〝見える化〟のニーズにも応えていく方針。

 自治体との連携も深めており、循環の仕組みを普及させるための情報発信にも力を注ぐ。

〈環境配慮型ビジネスを推進/多様な社会課題の解決めざす/丸紅〉

 丸紅は4月、繊維業界の持続可能な発展を目指し、環境配慮型ビジネスを推進する「MALOOP PROJECT」(マループプロジェクト)を開始した。環境に配慮した商材の開発や事業投資、環境負荷の低い素材や製品のトレードなどさまざまな角度から環境課題の解決に取り組む。

 丸紅は22年、国内で回収した古着のリユース・リサイクルを行う事業会社、エムサーキュラーリソーシーズを設立した。同社はパートナー企業と連携し、古着の循環の仕組みを構築している。

 回収した古着は国内外で販売するほか、ウエス、反毛繊維、燃料チップなどにリサイクルする。ポリエステル100%の古着から、再生ポリエステル糸を生産するスキームも提案する。

 出資先である米国・サーク社との繊維のケミカルリサイクルも拡大を図る。サーク社の綿ポリエステル製品を素材別に再生させる技術を活用し、ポリエステルはポリエステル繊維に、綿はリヨセルなどセルロース繊維に作り変える。これらの再生素材は海外の有名ブランドにも採用されている。

 「M―OBP」は、沿岸線から50キロ以内の陸地に廃棄され海に流出する恐れのあるプラスチックごみや廃漁網を有効活用するブランド。〝海のごみ〟由来の再生素材は、Tシャツやかばんなどへの採用実績がある。

 「離島クローズドリサイクル」は、鹿児島県・奄美大島で回収されたペットボトルを、丸紅グループのサプライチェーンを活用しアップサイクルする。

 廃ペットボトルをポリエステル繊維に再生させ、アパレル製品などの素材として使用する。作成した製品は、同島内のセレクトショップや全国の百貨店で販売する。

〈初のCFで好感触/消費者目線のモノ作り/一村産業〉

 一村産業(大阪市北区)は、欧州のメゾンブランド向けにユニフォーム用途で売れ筋となっているストレッチの「ラクストリーマ」、高通気の「アミド」をベースにした高付加価値の生地輸出を拡大している。北陸産地の技術力を活用した生地の高品質化や難度の高いPFAS(有機フッ素化合物)フリーといった環境負荷低減への対応など「ここ1、2年でかなりの評価をもらっている」ことが拡大につながっている。

 国内のユニフォームメーカー向けの生地供給では、ラクストリーマとアミドの半分以上は既にリサイクルポリエステル使いなどによるエコ化が進む。2021年から環境配慮型素材の統一ブランド「IMA ECO」(イマエコ)を展開。入社10年目前後の若手~中堅社員が中心となって同ブランドの浸透を図っている。

 その一環として11月に初めてクラウドファンディング(CF)に挑戦。形状記憶性が高く、シワになりにくく、フッ素フリーの撥水(はっすい)を施したアミドを使ったフルレングスパンツをマクアケに出品し、目標の30万円を大きく上回る約80万円を集めた。CFを通じて「消費者目線のモノ作り」を強化するとともに、ユーザーの声を「今後のBtoBでのビジネスに生かす」のが狙いだ。

 来年は、各種機能をカスタマイズで付与できるポリエステル紡績糸使いの綿調合繊生地「クワトロセブン」使いの製品で再びCFに挑戦する予定。環境配慮にも対応するという。また、同素材では北米向けにも輸出を計画している。

 市場へイマエコを浸透させながら、環境配慮と高付加価値の両面から新たな販路の開拓につなげる。