防じん服/エレクトロニクス展で存在感/着用時の快適性など注目

2025年02月03日 (月曜日)

 清浄な環境が求められるクリーンルームなどで着用される防じん服。作業者からの発じんを抑える高い機能を持つ一方で、「暑い」「蒸れる」といった課題もあった。メーカーもこれらの課題克服に取り組み、着用時の快適性向上を図った製品が登場している。このほど東京都内で開催されたアジア最大級のエレクトロニクス関連展でその一端を見ることができた。

 メーカーによると、人体と全ての装着品を含む作業者からの発じんは、クリーンルームにおける最大の発じん源とされている。人体に付着している異物(ちり、ほこりなど)の異物がクリーンルーム内に漏出するのを防ぐために着用するのが防じん服で、クリーンルーム用衣服やクリーンルームウエアなどとも呼ばれる。

 このほど東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されたアジア最大級のエレクトロニクス開発・実装展「第39回ネプコンジャパン」。エレクトロニクスに関連する国内外の企業が一堂に会し、半導体・センサー、電子部品などが会場に並んだ。その中で存在感を示していたのが防じん服だった。

〈ファン装着で熱中症対策〉

 東洋リントフリー(東京都杉並区)は、同展示会に継続して参加している。同社は1970年に国内初の防じん服の製造・販売会社として設立。同分野のパイオニアとして、高度な清浄・衛生管理が求められる半導体や医薬品、食品などの各業界の製造環境に求められる機能を持つ防じん服を提供してきた。

 今回のネプコンジャパンでは、快適性に焦点を当てた製品を数多く展示した。中でも目を引いたのが、電動ファンが装着されたベストだった。

 通常は快適な温度と湿度が保たれているクリーンルームだが、機械の熱や移動を伴う作業などで衣服内の温度が高くなることがあり、「熱中症対策として需要がある」と言う。

 同社の「ファン装着対応ベスト」は、2層内圧式構造が大きな特徴だ。同構造の両脇と襟部をメッシュ使用にすることで各部位への送風を効率的に分散することができ、効果的なクーリングにつながった。また。一枚仕立てのタイプと比べて衣服の膨らみが小さく、作業性を向上することができる。

 高い帯電防止性能が要求されるEPA(ESD保護区域)での着用を前提とした超制電性クリーンルーム用衣服も紹介した。高性能導電性繊維を格子状に織り込んだ「ギガテック」(帝人フロンティア)を採用し、優れた電気的抵抗と低い摩擦耐電圧性能を発揮する。防じん性や通気性も加味している。

 着用時の快適性を高めた新・着用快適防じん服では、帝人フロンティアが販売する四つ山扁平(へんぺい)断面形状糸「ウェーブロン」を使用している。吸汗・速乾性を付与しているほか、通気性も従来品より高い。高ストレッチ性を持つ生地を背面部に採用し、スムーズな作業をサポートする。

 そのほか、クリーンルームのマシンメンテナンスの際に着用するウエア・パッド(肘、膝用)もそろえる。

〈本社縫製工場を増強〉

 1923年創業、50年設立の老舗企業がブラストン(名古屋市熱田区)だ。創業当時から展開しているユニフォーム(オフィス、サービス、ワークウエアなど)に加え、クリーンルーム用の各種アイテムをそろえる。防じん服のほか、フード・マスク、アクセサリー、シューズ、手袋、ワイパーなどの消耗資材を製造・販売する。

 ネプコンジャパンには数年ぶりの出展。今回は快適性に着目した「清涼感防塵ツナギ服」を展示した。糸のバランスや製織の仕方に工夫を施すことで通気性を高めた。同社従来品と比較して約10倍の通気性を実現したという。生地が軽く、ゆとりのあるサイズ感で、長時間の着用でも疲れにくい。

 展示会ではさまざまなアイテムを並べたが、中でも中身が見える作業者用のバッグ類が人気を博した。「機密保持が重要視される中、持ち込みや持ち出しが禁止されている品がバッグに入っていないかどうかが一目で分かる」。リュックやショルダーといった各タイプ、大きさ、カラーは要望に応じる。

 そのほか、大手メーカーの乾式不織布撤退もあって、ワイパーにも注目が集まった。

 同社は、中国とタイ、ベトナムなどに自家工場を持ち、海外でクリーンルームウエアなどを生産している。ただ、小ロットや短納期対応を求めるユーザーも増えていることから、国内でのモノ作りも開始した。本社の一部を活用し、型紙、裁断、縫製、検品が一貫でできる体制を構築している。

 本社縫製工場「YYファクトリー」は、2023年9月にソーイングスタッフ5人でスタートを切ったが、現在は10人体制へと拡充した。九州エリアなどで需要が拡大していることもあり、「人員を15人程度にまで増やし、生産能力を拡大する方針」と話す。

 ソーイングスタッフは「募集すると応募がある」と言う。

〈「第11回ウェアラブルEXPO」/繊維関連企業・アイテム目立つ〉

 「ネプコンジャパン」と併催されたのが「第11回ウェアラブルEXPO」だ。最新のウエアラブル端末などを展示する同展でも繊維関連企業や繊維に関連するアイテムが目立った。

 ウエアラブルIoT技術開発のミツフジ(京都府精華町)は、独自のアルゴリズムを搭載し、猛暑リスク検知に特化したリストバンド、猛暑リスクを含む体の状態を可視化できるスマートウオッチなどを紹介した。

 シンプルさを重視した「ハモンバンドS」は販売開始4年だが、「最初の3年で2万台を販売。2024年は3カ月で2万5千台を販売」するなど急成長を遂げる。ネットワークで状態が管理できる「ハモンバンドN」も並べた。

 各種コネクタなどを販売するSMKは「Washable TextileコネクタReactex」などを並べた。同製品はウエアラブルテキスタイル用のコネクタで、操作性や伸縮性、柔軟性などに優れるほか、洗濯可能なことが特徴だ。需要動向を見ながら開発・提案を進めていくとしている。