技術の眼/YKK/ワコール/東洋紡せんい/マイクロバイオファクトリー/茶久染色/東レ

2025年02月13日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/着脱のしやすさ追求〉

 YKKは、高機能性で多様な用途にも対応するファスニング製品として「クイックフリー・クリックトラック・マグネティック」を打ち出す。同製品は、開具(ひらきぐ)に埋め込んだマグネットを近付けるとファスナーが閉じる「クリックトラック・マグネティック」と、左右に一定の荷重が加わるとファスナーが開く機能を備えた「クイックフリー」の二つの機能を融合させた。

 「ファスナーの開閉が困難な服は敬遠している」という障害のある人からの声がきっかけとなり、着脱のしやすさを追求した製品を開発した。

 着脱を楽にする機能性により、ユニバーサルデザインにとどまらず、スポーツシーンや子供服、シニア世代向けなどにも用途を広げている。

〈ワコール/立体物製作技術の用途拡大〉

 ワコールは、メルトブロー法で立体物を作る技術「Melooop」(メループ)の用途を広げる。ブラジャーのカップ部分の生産技術として実用化したが、他の用途でも活用が可能とみる。その一環として、ファッションブランドとの協業によるアイテムを3点製作し、1月のパリ・ファッションウイークで発表した。

 同技術は、2020年に独自開発に成功し、ワコールホールディングスグループのワコールマニュファクチャリングジャパンでブラジャーカップの生産技術として応用している。単一素材でモノ作りができ、型に繊維を吹き付けて立体物を成型するため廃棄材料が少ないという特徴がある。

 インナーウエア以外での活用の可能性を探るため、24年から経済産業省が主催する「みらいのファッション人材育成プログラム」に参画。これをきっかけにファッションブランド「doublet」(ダブレット)との協業が始まり、既存の手法では実現できなかった形やテクスチャーが表現できるようになった。

〈東洋紡せんい/正装感のあるシャツ開発〉

 東洋紡せんいは速乾性やノーアイロン、耐久性に優れた「ToV(トーブ)シャツ」の販売に乗り出す。中東向け民族衣装用生地の技術から着想し開発したもので、すっきりした襟元や美しいシルエットによって正装感を持ったシャツに仕上げた。

 学生服向けのシャツではトリコット地の需要が増えている。ノーアイロンに優れる一方で、ドレープ性によって見栄えがあまり良くないという声を受けていた。そこで中東向けの輸出生地の技術を生かし、織り密度や樹脂など細かく調整し、ポリエステル100%でありながらも「かなり着心地が良い」生地に仕上げた。

 速乾性があり、乾燥スピードはポリエステル65%・綿35%のブロード生地を使った従来品の1.6倍、ポリエステル100%のニット生地の1.8倍向上。洗濯後のシワの残り具合を表すW&W性(ウオッシュ&ウエア性)は1回洗濯後で3.8級、10回洗濯後で3.5級を維持。耐久性は従来品に比べ約1.4倍あると言う。

〈マイクロバイオファクトリー/微生物でインディゴ作る〉

 バイオ化学品の研究開発を行うマイクロバイオファクトリー(大阪市北区)は、微生物で作るバイオインディゴ染料の開発を進めている。植物由来の糖を発酵原料にしてインディゴを作ることに加え、将来的にはセルロース繊維使いの廃棄衣類や生地などを糖化してバイオインディゴ染料を製造する計画も立てる。バイオインディゴとは別に、廃繊維から染料を回収してリサイクルする開発も進めており、商用化に向けて動く。

 バイオインディゴは微生物発酵によって生産する。アニリンを使用しないため、安全性が高い。また、原料に植物バイオマス資源由来の原料を使用するため、環境にも優しい。天然藍に含まれるインジルビンのような赤い色素が含まれるため、赤みのある青になる。化学品専門商社との共同研究も進めており、今年に小ロットの量産化など事業化を目指す。価格も検討中。清水雅士社長は「目指しているのは通常のインディゴ染料と天然藍の中間ほどの価格。量産によって値段を下げていければ」と話す。

〈茶久染色/導電糸がドライヤーに採用〉

 チーズ染色の茶久染色(愛知県一宮市)が新規事業として手掛ける導電糸「Qnac」(キューナック)シリーズがヘアドライヤーに採用された。これまでは路面の融雪用途として企業向けに販売実績はあったが消費者向けは初めてとなる。

 キューナックはカーボンナノチューブをポリエステル長繊維にコーティングした導電糸。この糸を使った織物も商品化しており、「キューナックT」として面状のヒーターを開発した。

 今回採用されたのは表面温度を280℃まで昇温可能な高温タイプの「キューナックTH」。美容製品を販売するカロスビューティーテクノロジー(東京都千代田区)の商品であるモバイルヘアドライヤー「Dr.Beau」(ドクタービュー)の熱源となるヒーターに使われている。

 キューナックTHを使用することで、従来のドライヤーに使われるコイル型と比べて消費電力を大幅に抑えたほか、コンパクトなサイズも実現した。最高で60℃の温風により髪の毛に優しいのも特徴だ。クラウドファンディングを経て、4月から一般販売を予定する。

〈東レ/抗ウイルス粒子で加工剤〉

 東レは、2022年に開発した従来比100倍以上の速度でウイルスを不活化する即効性の抗ウイルス粒子を活用し、抗ウイルス性に加えて抗菌性、防カビ性、抗アレル物質性を兼ね備える加工剤(塗剤)を開発した。酸化セリウム粒子を独自方法で合成・表面処理したもので、ウイルスに対する吸着性と酸化分解機能を持ち、新型コロナウイルス(SARS―CoV―2デルタ株)を15秒で99.9%以上不活化することを確認。これは従来の金属系抗ウイルス剤と比べて100倍以上の即効性となる。インフルエンザウイルスとネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)に対しても99.99%以上の不活化効果を確認した。

 独自の粒子製造技術によって粒径は約30ナノメートルと小さく、水溶液中での分散性も極めて高い。粒子サイズが小さいことで散乱光も小さく、高い透明性を持つことで付与する製品の外観を損ねない。酸化セリウムは構造安定性が高いため、銀系や銅系の抗ウイルス加工剤で課題となっている黒ずみ・変色といった経年変化も起こりにくい。