東レ/ナイロン66のケミカルリサイクルへ/亜臨界水でモノマー回収
2025年02月20日 (木曜日)
東レは、ナイロン66のケミカルリサイクル技術を新たに創出した。亜臨界水を用いた独自の解重合技術によって、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の2種類のモノマーを高収率・高効率での回収を可能した。回収モノマーの再重合にも成功している。今年央にサンプルワークの体制を整え、2030年ごろに向けて本格量産準備を進める。
ナイロン66は、ナイロン6などと比べてケミカルリサイクルが困難といわれる。2種類のモノマー回収がネックとされ、低温アルカリ分解法やアンモニア分解法などの解重合法があるが、「実装には至っていない」(東レ)。今回の技術は、水の臨界点(374℃、22メガヘクトパスカル)よりもやや低い領域の亜臨界水を利用する。
高温・高圧状態の亜臨界水は、有機化合物やポリマーを溶かしやすいという性質を持つ。これを応用した解重合新技術では、ナイロン66の解重合が均一かつ数十分程度の短時間で進行し、モノマー原料として回収できることを見いだした。この技術は、ナイロン66製造時の二酸化炭素排出量削減にもつながる。
高耐熱性や高強度などが特徴のナイロン66は、エアバッグやタイヤコードなどの自動車分野、産業資材に使用され、日本で年間約10万トン、世界で約130万トンの市場規模がある。まずはエアバッグなどの使用済み原資に含まれる他素材の分離技術、モノマーの分離および精製技術などの確立を図る。
今年の年央に品質確認、顧客評価のためのサンプルワークができる体制を整え、30年ごろにプラスチックリサイクルが法規制化される動きを見据えながら量産への準備に取り組む。同社によると「1万トンの原資が集まると石油由来品と同等のコストが出せる」とし、製造工程で出る端材の活用も視野に入れる。