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25年4月新卒採用を追う【中】/就職活動の早期化に苦慮

2025年04月02日 (水曜日)

 全社ベースの新卒採用を見ると、素材メーカーは昨年より採用の少ない企業が目立つものの、「各部門の事業上の必要性を踏まえた総合的な判断」(紡績)、「大きな増減はない」(合繊メーカー)としている。富士紡ホールディングスでは、大卒はコース別(専攻別)で採用を実施し、内定時に研磨材や生活衣料など初期配属事業を確約。合繊メーカーの中には勤務地固定の総合職の採用コースを新設した企業もあった。

 一方で商社は「中長期的な当社成長を見据え、人材基盤強化のため」として、採用を増やす企業が多く、14社中8社が増員した。スタイレム瀧定大阪では社内採用イベントの回数を増やし母集団形成を強化。「選考も例年より約1カ月時期を早め、優秀者層の獲得を目指した」

 伊藤忠商事では、全社コーポレートブランディングと連携したビジネス、働き方改革、女性活躍推進、SDGs(持続可能な開発目標)といった取り組みの発信を強化。インスタグラムのさらなる活用によって学生目線での情報発信も心掛けた。

 アパレルメーカーでは、オンワードグループが「新規ブランド、事業の拡大や体制強化のため」として126人を増員。ワールドも71人増やした。それ以外は、前年並みか減少。全体的に就職活動の早期化に対応しきれず、出遅れた企業も数社見られた。

 オンワードグループのオンワード樫山では、インターンシップの強化や「学生とのオンライン・オフライン問わず接点の増加を図った」。クロスプラスは採用人数がやや減ったものの、「採用フローの時期を分けて実施することで、学生の内定受諾状況を踏まえた効果的な採用が行えた」。コーポレートサイトの採用ページを見直した結果、「母集団の拡大につながった」と評価する声もあった。

 従来はオンラインでの説明会のみ開催してきたが、対面に切り替える企業も増えている。対面開催の方が「学生の理解度が高い点や、直接アプローチを行う接点を作れるため、効果的だと思った」(アパレルメーカー)。選考を対面に切り替えるとともに、他者との関わり方や課題解決の能力などを見極めるため、グループ面接からグループディスカッションにする企業も増えている。

 全体的には選考時期を早め、インターンシップを強化する傾向にある。仕事体験を実施した企業は「採用に効果があった」(紡績)としてそれなりの成果を出した。実際に働き、将来自身がこの企業で働く姿を想像できるか。その機会をどのように作るかがますます重要になっている。