京大、セイコーエプソンなど 防災服をファッショナブルに
2025年04月03日 (木曜日)
京都大学防災研究所産学共同研究部門アートイノベーション研究領域の土佐尚子特定教授とセイコーエプソンは、金属加工の濱田プレス工藝(大阪府東大阪市)と協力して「防災機能を持った日常服:命を守る防災ファッション」を製作した。
2月に米国で開催された「ニューヨーク・ファッション・ウイーク」(NYFW)にも参加し、アートとデジタル捺染、LEDディスプレーが融合した製品を披露した。
土佐教授は自然界に隠された美を先端技術によって可視化する研究を進めており、音の振動を流体にぶつけた際に生まれる動きを高速度カメラで撮影したものを「サウンド・オブ・イケバナ」として発表してきた。これにセイコーエプソンのデジタル捺染技術を融合させ、プリント柄に使ったウエアの制作・販売を事業化する共同研究を2021年から実施している。
このほど開発した防災服は、防炎や高視認、防護など防災機能を持たせたウエアに土佐教授のデジタルアートとセイコーエプソンのデジタル捺染を融合して開発した。土佐教授は「ファッション性を高め、防災機能を持ったウエアを日常服としても着用できる可能性を提示することが狙い」と話す。
アラミド繊維に顔料インクによるデジタル捺染を施し、防炎機能と意匠性を両立したコート、デジタルサイネ―ジで使用するLEDディスプレーを組み込んだワンピースやタートルネック、ホログラムシートをウエアに帷子(かたびら)状に配置した“甲冑(かっちゅう)ドレス”などを製作した。LEDディスプレーの制作と装着は濱田プレス工藝が担当し、アラミド繊維の生地は帝国繊維が提供した。カケンテストセンターで防炎性試験も実施し、性能を確認している。
共同研究は、23年から国際的なデザイナー支援プラットフォームを運営するカナダの組織、グローバルファッションコレクティブがNYFWで開催するファッションショーに毎年招待されており、2月のNYFWは4回目の参加だった。土佐教授は「あくまでコンセプト提案の作品であり、実用化には軽量化など課題も多いが、新しいファッションとして大きな反響があった」と話す。
今回製作したウエアは、13日に開幕する大阪・関西万博の関西パビリオン京都館で展示する予定。また、9月27日には、日米の相互理解を促進する米国の非営利団体、ジャパンソサエティーがニューヨークで開催するファッションショーにも参加する。