一村産業 国内生産で連携強化

2025年04月09日 (水曜日)

 生地商社兼北陸産元の一村産業(大阪市北区)は今期(2026年3月期)、海外コンバーティング力の向上と国内産地企業との連携強化を図りながら、販売面では「中東民族衣装向けに次ぐ柱の創出、市場開拓」(大嶋秀樹社長)に力を注ぐ。

 同社は北陸産地を軸とした国内のほか、中国、ベトナム、インドネシア、インドで糸・生地を生産する。それぞれの生産工程を分解し、その都度最適な生産地を見極めることでコスト競争力の向上と納期短縮を実現させてきた。

 このグローバルコンバーティングの機能を今期以降もさらに強化する。米国の関税問題や戦争・紛争など混迷を極める世界情勢への対処でもある。

 特に近年は中国、ベトナムでの生産が大きく伸びており、今後もポリエステル紡績糸、同短繊維織物、染色加工という各工程で最適地を見極めるとともに、海外生産を管理できる人材の教育にも努め、海外生産の品質管理も改めて徹底する。その一環として、東レ中国法人の合繊織・編み物の製布・染色加工・縫製を行う東麗酒伊織染〈南通〉(TSD)で若手社員を研修させる取り組みも始めた。

 国内生産では産地企業や染工場と一体で付加価値化の方向性をより強める。丸井織物(石川県中能登町)と共同特許を持つ高通気の「アミド」がその好例だが、「こうした事例は実は他に幾つもある」(柴司常務取締役営業統括)。北陸の大手染工場とも共同開発案件が現在進行形と言う。

 販売面は「中東以外」がキーワードになる。中東民族衣装向けを維持拡大させつつ、ユニフォーム向けと婦人服向けを大きく拡大させたい意向だ。ユニフォーム向けと婦人服向けでは商品や販路での相乗効果も既に発現しており、さらなるシナジーを狙っていく。産業資材向け不織布も、スピードを上げて実績を積んでいく。

事業利益が過去最高 25年3月期

 一村産業の繊維事業の2025年3月期決算は、前期比増収増益になる。売上収益が前期比9%増、事業利益が同80%増になる見込み。事業利益は、東レ子会社になった46年間で過去最高。

 旗・幕の非衣料向けが需要減退で減収だったものの、主力の中東民族衣装向けが大きく伸び、ユニフォーム向けは微増収だった。欧州メゾン向けなどのライフスタイル関連が下半期に盛り返して増収となり、国内染工場の自販部門向け生地販売も拡大した。

 新規分野として取り組みを強めた産業資材向け不織布は伸ばし切れなかったが、種まきは進んでおり今期以降には数字になってくると見込む。

 今期は10%前後の増収を狙い、伴って利益も拡大させる。