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東洋紡せんい/“強い”事業体目指す/増益確保で改善に手応え

2025年04月09日 (水曜日)

 東洋紡せんいの清水栄一社長は2024年度(25年3月期)業績に関して「ほぼ計画をクリアしており、収益改善が進んでいる」と手応えを示す。25年度は東洋紡STCから工業材料事業と機能資材事業が移管されることも生かし業容の拡大を目指す。世界経済の先行き不透明感が強まる中、「環境変化への耐性が“強い”事業体を目指す」と強調する。

 同社は24年度に売上高330億円、営業利益10億円を計画していたが、ほぼ達成したもよう。スクール事業は流通在庫の増加で勢いがやや鈍化しているものの「合繊化、ブレザー化が追い風になっている。これまでの(開発と提案の)方向性は間違っていない」と自信を示す。ただ、布帛製学販シャツは少子化とニット化の影響で需要減退が加速していることから、国内の生産拠点の再編を検討する。

 輸出織物事業も順調だ。中東民族衣装用織物に加え、欧州向けナイロン高密度織物も好調。マテリアルリサイクル品とマスバランス方式も含めたケミカルリサイクル品をそろえていることが成約につながっている。マテリアル事業は原糸販売が好調で「原料回帰の戦略が成功している」という。特に新方式開繊技術を活用したリサイクル綿糸「さいくるこっと」への注目は高い。

 一方、ユニフォーム事業は増収増益で推移したものの備蓄アパレル向けの減少を企業別注の好調で補っている形となり、「受注の安定性という面で課題が残る」と指摘。このため白衣・サービスユニフォームのさらなる拡大などで「安定した事業へと再構築する必要がある」と指摘する。また、自社縫製工場で発生する端材をリサイクルする「T2T」もリネンサプライ企業と提携し、レンタルユニフォーム用途で具体的な取り組みを進める。

 スポーツ事業は依然として苦戦した。低採算の製品ビジネスを縮小しながら、中国内販向けの生地輸出でカバーする形となっているが、本格的な収益改善には至っていないもよう。このため「25年度は改善に向けた“勝負の年”になる」と指摘する。

 25年度に関して清水社長は「衣料繊維で営業利益を1・5倍にし、そこに東洋紡STCから移管された事業が加わり、全体として営業利益倍増が目標」と話す。ここに来て米国のトランプ大統領による相互関税政策で世界経済の先行き不透明感が急速に高まっているが、環境変化に対する耐性を高め、「外部要因でふらつかない事業体を構築する」ことを目指す。