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開発最前線2025【上】/シキボウ/進化し続ける「アゼック」

2025年04月14日 (月曜日)

 独自技術を掛け合わせることで、ますます高度化する紡績の開発素材。消費者のニーズをつかむ最新素材を追う。

 春夏向けユニフォーム素材として、圧倒的な知名度を誇るのが、シキボウの高通気素材「アゼック」だ。その織り構造は、古代の倉庫建築の代表格として知られる正倉院の校倉(あぜくら)造りから着想を得ており、異なる番手糸を最適に配置することで、織りの隙間に高い通気性を持たせている。

 アゼックは1998年に開発され、翌99年に発売。発売当初から注目され、その年の秋には「グッドデザイン賞」を受賞した。2000年以降はシャツやユニフォーム用途で一気に採用が広がり、特にユニフォーム業界においては夏向けの素材として定着。ライバル各社も「なかなかアゼックの牙城を切り崩せない」と言わしめるほど、同社を代表する看板素材となった。

 近年は夏場の高温化により、アゼックへの注目が再び高まっている。夏が長くなる傾向を受けて、通年で着用されるユニフォームへの採用も増えてきた。SDGs(持続可能な開発目標)と組み合わせた素材開発も活発。顧客の要望に応じて、強撚糸やストレッチ素材などを組み合わせた生地のバリエーションも広がりを見せている。

 既存の特殊技術と掛け合わせた素材開発にも力を入れている。ポリウレタンを使わない特殊技術のストレッチ加工「パワール」との組み合わせでは、一部のユニフォームメ―カーが採用。毛羽が少なくすっきりとした表面感を持つ特殊紡績糸使いの「クールボディ」は接触冷感性に優れ、アゼックと組み合わせることで、より通気性や快適性を高めた。ニットタイプのアゼックも採用が増えている。

 業務提携するファッションブランド「アンリアレイジ」が、パリで25/26秋冬コレクションを発表。アゼックが採用され、その構造をヒントに、風ではなく光を透過させるという大胆な発想を取り入れたウエアに仕上げた。

 昨日から始まった大阪・関西万博でもアンリアレイジと連携し、NTTパビリオンにスタッフユニフォームを提供。アゼック使いの電動ファン(EF)付きウエアやポロシャツが採用された。

 アゼックのような高通気生地がEFウエアに採用されるのは珍しい。「物質ではなく、風のような非物質的な感覚をまとう」近未来的なデザインが印象的だ。万博を通じてアゼックはさらに進化していく。