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25年度も確実な成長目指す/関税などで先は読みにくく/合繊メーカー系商社

2025年04月15日 (火曜日)

 合繊メーカー系商社が存在感を強めている。2024年度(25年3月期)の業績は、国・地域や分野で動きは分かれるものの、おおむね堅調な推移を見せ、帝人フロンティアは大幅増益を見込む。米トランプ政権の政策や中国経済の動向など、先が読みにくい状況にあるが、各社は25年度も確実な成長を目指す。今年度の方向性や方針を追った。(桃井直人)

 24年度は、自動車分野が勢いを欠いた一方で、衣料品分野はスポーツ中心に順調だった。帝人フロンティアは生地と製品ともに数字を伸ばし、事業利益(帝人の繊維・製品事業の数値)が前年度比40%近い増益となる見込み。東レインターナショナルも単体で増収増益を確保する見通しだ。

 25年度は、トランプ関税の影響もあって先の読めない状況が続く。東レインターナショナルの片岡智彦社長は「世界経済悪化の可能性は否定できない」とし、帝人フロンティアの平田恭成社長は「日本はそれほど悪い要素はない」としつつ、「海外は不透明感が強い」と話した。

 難しい事業環境にあるが各社は持続的成長のための施策を打つ。25年度に中期経営課題の最終年度を迎えた東レインターナショナルは、前年度実績から大きく拡大させるとし、単体と連結ともに過去最高の事業利益を計画する。連結の売上収益では同社初となる1兆円を目指す。

 東レインターナショナル主導でマーケットを開拓する自販ビジネス(独自ビジネス)を成長の原動力とする。継続的に取り組んでいる施策ではあるが、欧州向け輸出や縫製品事業の拡大をさらに深耕する。東レ本体の戦略に沿って進めるビジネスとの両輪で成長速度を加速させる。

 帝人フロンティアは、収益力の向上に力を入れる。中国の子会社で、ポリエステル長繊維を中心とする化合繊織・編み物を製造・販売する南通帝人は順調な動きを見せるが、「25年度は前年ほどではなくなる可能性もある」として改めて気を引き締める。

 前年度は事業利益180億円の見込みだが、常の数字ではないとし、まずは150億円の安定確保を目標に施策を進める。その一環としてRO(逆浸透)膜関連や東南アジア拠点、環境関連での投資を検討するほか、M&A(企業の合併と買収)の可能性も排除しない。

 旭化成アドバンスは、25年度から新中期経営計画を始動する。春見恵司社長は「グローバル化を推し進める」とし、エアバッグ関連をポイントの一つに置いた。ベトナムのエアバッグは収益への貢献を高め、インドのエアバッグ包材も夏に稼働を開始する。

 繊維事業は車両資材が鍵を握るとしつつ、事業全体で成長を目指す。環境資材事業部の公共工事関連は、得意とする布製型枠工法を軸に広げていく方針。樹脂化学品は需要自体に大きな変化はないとみているものの、価格動向に注視が必要とした。