旭化成ベンベルグ事業 技術サポートを強化

2025年04月16日 (水曜日)

 旭化成のベンベルグ事業部は、キュプラ繊維「ベンベルグ」の需要家に向けた染色や環境負荷低減のための技術サポートを強化する。

 2022年の火災からの復旧を進めていたベンベルグ工場(宮崎県延岡市)も来年1月には正常化することから、フル生産・フル販売の維持に向けて需要の掘り起こしに取り組む。

 ベンベルグの販売は24年度(25年3月期)も好調に推移した。橋本薫ベンベルグ事業部長は「特に欧州と中国向けが好調で、輸出比率は80%を超えた」と話す。欧州市場では圧倒的なブランド力が強みとなっており、中国市場でもオンリーワン素材としての新奇性が評価された。用途も裏地だけでなくアウターやインナーに広がっていることが販売拡大につながっている。

 一方、インド・パキスタンの民族衣装用途はやや勢いが鈍化した。高級ゾーンで確固たるポジションを確保しているものの、ここに来てレーヨンフィラメントの価格が下落していることから、ベターゾーンでの競争が激化した。このためインド・パキスタン市場では民族衣装だけでなく洋装アウター向けのプロモーションを強化している。

 25年度に関して橋本事業部長は「ベンベルグの生産基盤を維持するためにもフル生産・フル販売が使命」と強調する。ベンベルグ工場は22年の火災以来、再建作業が進められていたが、26年1月には再建が完了する。これまで生産能力に限界がり、供給不足が続いていたが「設備の再建で生産能力は火災前の90%まで回復する」ことになる。生産能力正常化後もフル生産・フル稼働を維持するために25年度から需要の掘り起こしに努める。

 その一つがアウター用途のさらなる拡大だ。ベンベルグは裏地で圧倒的な位置を占めるが、ファッションのカジュアル化の流れから裏地自体の需要が縮小傾向。アウター用途の拡大が需要掘り起こしには欠かせない。特に欧州、中国、インド市場で積極的なプロモーションを実施する。9月の「インターテキスタイル上海」にも単独出展する。

 もう一つが需要家に向けた技術サポートの強化。特に特殊加工など染色関連と省エネルギー・水使用量削減など環境負荷低減に関する技術を旭化成として開発し、欧州やインド、中国の需要家に提供する取り組みを拡充する。こうした取り組みもアウター用途の拡大につなげる。