開発最前線2025 【下】高度化する紡績の技術力/大和紡績
2025年04月16日 (水曜日)
リングでもMVSでも
大和紡績は、紡績技術や特殊加工、独自原料の活用などを掛け合わせた素材開発を強化している。2月に東京本社で開催した「2025年春 サステナブル&機能素材展」では多数の新商品を発表。その中でも特に注目を浴びたのが、綿100%でありながら高い吸水速乾性、ストレッチ性、ソフトな風合いを兼ね備えた「プレミア」だった。
これまでも合繊並みの速乾性を持つ綿100%の高機能生地「ミラクルドライ」を開発していた。ただ、その風合いに対して「好みの問題にはなるが、硬いという声があった」。ミラクルドライでは、素材を前処理し、高温高圧下で精練・漂白した後、樹脂加工によって綿を疎水化することで吸水速乾性を向上。これは、以前開発した素材「エコリリース」の技術を応用したものだ。
プレミアはミラクルドライを進化させた製品で、基本的に樹脂加工を必要とせず、特殊な後加工によってミラクルドライよりもソフトな風合いを実現。拡散性残留水分率試験(0・6㍉㍑滴下)では55分以内に乾き、吸水性も5秒以下(JISL1097)と、ミラクルドライに匹敵する性能を持つ。
綿100%でありながらもストレッチ性があり、抗ピリング性も3~4級以上を確保。繰り返し洗濯しても、ねじれや縮みが少なく、寸法安定性にも優れる。さらに肌触りがよく、ソフトな風合いと、上品な艶感も特徴となっている。
多様な生地の風合いで顧客の幅広いニーズに応えるため、ミラクルドライ、プレミアのいずれもリング紡績糸、過流精紡機MVS(ボルテックス)による紡績糸の2タイプを用意。リング紡績糸は柔らかい表面感、MVS紡績糸は目面が整ったすっきりとした外観となる。
糸番手では20~40番手で展開しているが、MVS紡績糸では細番手になるほど整った目面を出すのが難しく、その点は今後も改良を加える。プレミアでのリング紡績糸タイプでは、超長綿によるサイロコンパクト糸を使い、文字通り“プレミア感”を出した。
OEMによるニット製品での供給が基本だが、要望があれば織物での開発も検討している。
また、MVS紡績糸では、毛羽立ちを抑えつつ、通常よりも柔らかく仕上げた「エアコット」糸の技術を活用。今後は、エアコットを軸にした素材開発にも力を入れる。
大和紡績には、グループに国内で唯一短繊維レーヨンを生産するダイワボウレ―ヨンがあり、機能レーヨンを用いた素材開発も加速。自社の紡績技術と差別化された機能レーヨンを組み合わせることで、他社にない高い独自性を持つ素材開発にも力を入れる。
(おわり)