春季総合特集Ⅱ(18)/Topインタビュー/GSIクレオス 社長 吉永 直明 氏/慌てることなく見極める/二つの100周年に向けて
2025年04月23日 (水曜日)
GSIクレオスは、2025年度(26年3月期)を初年度とする新中期経営計画に取り組む。25年度はグループの再編や子会社化したソアロンの足場固めを優先し、良い意味での踊り場とする。吉永直明社長は「創業から100年を迎える26、27年度に飛躍」を図り、もう一つの節目である「31年の設立100年につなげる」と強調した。
――Gゼロ時代に入ったといわれます。日本に求められるものは。
Gゼロは政治問題になりますが、経済にも影響を与えます。米トランプ大統領の政策もあって世界は混迷の度合いを深めていると言えますが、われわれに求められているのは慌てずに見極めることなのだと思います。繊維とそれ以外の事業にも何らかの影響が出てきますので、冷静な対応を図っていきます。
影響はひとくくりで考えることはできません。例えば半導体は米国と中国の関係に大きく左右されるでしょう。双方が自分たちの利益を最優先すればさまざまな問題が発生する可能性は無視できません。何が起こっても対応できるよう、何かが起こるといった前提で事業や経営に当たる必要があると思います。
――GSIクレオスとしては。
まず繊維ですが、強みを生かせる分野に特化し、より強い事業への成長を目指します。これまでは強い部分と弱い部分が混在していましたが、グループの再編によって弱い部分を取り除きました。先般公表した連結子会社であるクレオスアパレル、SHAREの事業撤退がその一つになります。
――強い部分については。
3月に子会社化したトリアセテート繊維事業のソアロンです。すぐに“圧倒的収益”の確保は考えていませんが、繊維事業の基幹商材として世界展開への取り組みを強化します。当社には商社としての販売力があり、そこに唯一無二の「ソアロン」を組み合わせることで強いビジネスに育てていきます。
ソアロンは、三菱ケミカルグループの一事業から会社になりましたが、北陸産地に根差していることに変わりはありません。GSIクレオスは北陸産地で知られた存在とは言えず、心配している織物会社も少なくないと思います。会社の認知を高めるほか、連携を深めて、ソアロンのビジネスに本気で取り組むことを示します。
――24年度が終わりました。
営業損益で厳しい結果となった子会社があったため営業利益は伸び悩みましたが、純利益については当初の計画である22億円を上回ることができる見通しです。24年度は現中期経営計画の最終年度でもありますが、約束した数字を確保しつつ、事業内容の変革に取り組んだ中計になったと思っています。
現中計を改めて総括すると、米中問題や地政学リスクといった事業環境の中で着実に成長することができたと評価しています。連結子会社の事業撤退、トリアセテート繊維事業の買収などを実施しました。3年間での取り組みの全てに満足しているわけではありませんが、やるべきことはやったと言えるでしょう。
――新年度になりました。事業環境は。
事業環境自体は厳しいと捉えています。米国経済への若干の懸念、トランプ関税などから国民の意識が冷え込む可能性があります。悪い影響が顕在化しそうな気配も感じられるのですが、そのような事業環境下でもGSIクレオスは成長し、進化を目指します。
新しい中計も始動しますが、25年度は良い意味で踊り場になると考えています。子会社のソアロンをはじめ、当社にとって新しい事業の基盤をしっかりと固めて、26、27年度での飛躍につなげます。
環境が整えば25年度も成長を加速しますが、もう一つ上のステージに向かうための準備の1年に位置付けます。
――27年は創業100年に当たります。
中計最終年度の27年が最初の100年です。31年には会社設立100年を迎えます。この二つの100周年に向けて成長のスピードを上げていきます。伸び代は米国やインドなどの海外になりますが、ソアロンを含めて国内外で成長を図っていきます。
〈昭和時代の思い出/未来に明るさを感じた〉
吉永さんは「米国赴任の時期と重なる平成の印象はあまり強くない」とし、「昭和の方が思い出深くて懐かしい」と語る。その吉永さんにとって昭和は良い時代だった。「日本は高度成長期にあり、物価も給料も上昇し、活気に満ちていた。世界では民主主義が広がっていき、中学生の頃から高校生、大学生までずっと『未来は明るい』と感じていた」と話す。失われた30年といわれてきたが、再び日本が輝く時代になってほしいとした。
【略歴】
よしなが・ただあき 1979年GSIクレオス(旧グンゼ産業)入社。2007年取締役、10年米州統括GSIホールディング社会長兼GSIアメリカ社会長、12年常務、16年常務兼常務執行役員などを経て、17年に代表取締役社長兼社長執行役員