春季総合特集Ⅲ(12)/Topインタビュー/柴屋 社長 奥野 雅明 氏/輸出拡大方針に変化なし/9カ国のスタッフ配して
2025年04月24日 (木曜日)
生地商社の柴屋(大阪市中央区)は2025年1月期で8期連続増収を果たした。今後も売り上げ拡大を志向し、特に海外市場開拓を優先する。今期は日本含め9カ国のスタッフをそろえつつ、8カ国以上の海外展に出展する。輸出拡大方針は米国関税問題の中でも揺らがない。奥野雅明社長に考えを聞いた。
――Gゼロ時代の到来により不透明感が増しています。貴社が国内外で改めて強化していく取り組みとは。
米国の関税がどうなろうとも、輸出を拡大させていくという方針に変更はありません。ただ、対米が難しくなる可能性はありますので、これまで以上に広範な国・地域へのアプローチが必要になるでしょうね。さまざまな国籍のスタッフを雇用することやさまざまな国の展示会に出展することが具体的な輸出拡大策になります。
当社には今、日本を含め9カ国のスタッフがいます。日本、ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツ、韓国、インドネシア、ベトナム、中国で、全員が輸出担当です。今後も多国籍化を進めていきます。
展示会出展でも国数を増やしていきます。当社は以前から、フランスの「プルミエール・ヴィジョン(PV)・パリ」やイタリアの「ミラノ・ウニカ」(MU)、中国の「インターテキスタイル上海」といった海外の生地展に出展し、海外顧客を開拓してきました。今年も既に2月のPVパリ、MU、3月のインターテキスタイル上海に参加しています。
ただ、7月のMU、9月のPVはいったんスキップします。出展費用、渡航費、滞在費など経費がかさむことや、継続出展によってリピーターを確保できていることなどが理由です。
この二つの展示会をスキップすることによって浮いてくる費用を他の海外展経費に振り分け、さらに広範囲に販路を開拓していきます。
5月にはアラブ首長国連邦の「インターナショナルアパレル&テキスタイルフェア」(IATF)に初出展し、6月にはスペインの「テキスタイルエキスポバルセロナ」とフランスの「プレコ・パリ」にも初出展することを決めました。同月には「インターテキスタイル深セン」にも継続出展します。
8月には韓国「プレビューインソウル」に、9月にはドイツの「ミュンヘンファブリックスタート」と英国の「ロンドンテキスタイルフェア」に出ます。ミュンヘンは初です。このほか、アジアや米国などの展示会出展も検討しているところです。
――国内顧客に対してはどういった戦略を。
国内顧客だけではありませんが、昨年からスワッチの送付先を大幅に増やしました。一年間で数千社に約7万㌻のスワッチを送りました。アナログで古典的な手法ではありますが、単純に柴屋という会社の名前や柴屋の生地を目にする機会が増えますので、意外に有効ではないかと考えています。手間と時間はかかりますが、この作業を今年も続けます。
――25年1月期の単体決算はいかがでしたか。
売上高が前期比2・8%増の32億9400万円になりました。8期連続の増収です。生地も製品も伸びました。もっと大きく伸ばしたかったのですが、営業利益、経常利益も伴って伸びましたのでそれなりに満足はしています。輸出も微増でした。
――今期の見通しは。
2月の単月売上高が20%減とスタートダッシュにつまずいたのが痛いですが、何が何でも通期で前年割れは避けたい。33億円は死守したいですね。
世界に目を向ければマーケットは幾らでもあります。人員も増やしていますので、その成長をいかに促していくかがテーマです。人材さえ育てばまだまだ業績を大きく伸ばせるという自信があります。
――商品戦略は。
オーガニック綿使いなどの環境配慮系素材や機能性素材を増やします。付加価値品をそろえて平均単価を引き上げていく戦略です。ヒット商品の「天日干し」シリーズでも新商品を投入していきます。
〈昭和時代の思い出/乾布摩擦に意義見いだせず〉
「合理的でないことがたくさんあった記憶がありますね」と奥野さん。小学校の2年生で平成になったため昭和の記憶は少ないが、例えば乾布摩擦がその一つ。昭和時代には民間療法として全国の小学校で導入されていたが、健康に良いというエビデンスを示した学術的研究は乏しく、廃止された。幼い奥野少年は「意味のないことをやらされているな~」と感じていたそう。合理的な仮説検証が常のコンサル出身の奥野さんをよく表すエピソード。
【略歴】
おくの・まさあき コンサルティング会社勤務を経て2003年柴屋入社。13年取締役、17年4月から現職





