春季総合特集Ⅳ(2)/Topインタビュー/トンボ 社長 藤原 竜也 氏/海外協力工場と連携密に/心情的なつながりも深化

2025年04月25日 (金曜日)

 トンボは今春の入学商戦で、学生服、スクールスポーツともに新規校の開拓が順調に進んだ。さまざまなコストが上昇する中、価格の改定も計画に近いところまで進行する。一方で在庫過多が課題として残っており、下半期(2025年1~6月)は「適正なレベルにまで在庫を圧縮する」(藤原竜也社長)ことに注力。業務の効率化を見据え、デジタル化にも力を入れる。

――主導国のないG0時代に突入し先行きが不透明になる中、国内、海外で改めて強化していく取り組みは何ですか。

 当社ではまだまだ国内生産が大半を占めます。ただ、縫製人口は増えず、当社の協力工場でも廃業が出てきているなど、今後は国内でモノが作れなくなる恐れがあります。当然、海外生産の重要性が増します。

 今ある海外の協力工場とより連携を密にしなければなりません。仕事を計画的に発注するなど、工場が安定的に経営できるようにしていくことが重要です。人と人の心情的なつながりも深めていきます。新型コロナウイルス禍以降、各担当者には積極的に海外出張をしてもらっています。

 カントリーリスクが高まる中、BCP(事業継続計画)的に他国での生産も考えていかなければなりません。

 縫製以外の材料調達に目を向ける必要もあります。高校の授業料無償化の所得制限が撤廃されれば、私学では制服によりこだわろうという流れになってくるのではと考えています。一方、公立校はポリエステル100%使いの制服など、より安価な流れに進む可能性がありそうです。そうなると、国内素材の採用だけでは立ち行かなくなります。海外の紡績メーカーなども開拓していくことが今後求められます。

――今年の入学商戦の状況について。

 詰め襟、セーラー服の需要が縮小し、一層ブレザー化が進んできました。また、私学人気が継続しており、私立校からの受注が増えています。

 生産状況も、学生服、スポーツともに先行生産によって順調に推移しました。ブレザー化よって小ロット化がより顕著になってきています。

――25年6月期の見通しは。

 目標(売上高460億円)に近いところまではいけそうです。一番の要因はやはり価格改定です。目標の80%までは達成できました。世の中の価格改定ムードに助けられている部分はあります。ただ、コストアップに相殺され、利益目標には届きません。あとは学校開拓。今春も当社単体でモデルチェンジを学生服、スポーツともに多く獲得しました。

――下半期の注力ポイントを。

 今春の入学商戦に向けて先行生産に力を入れましたが、相反して在庫が増えたということです。下半期は在庫の圧縮がメインになってきます。備蓄生産を絞った上で、一昨年の期末在庫高レベルにまで戻していきたい。

――基幹システムのクラウド化やグループ会社の瀧本(大阪府東大阪市)とのシステム統合の進捗(しんちょく)は。

 当初はクラウド化を進める計画でした。ただ、データの連携スピードや費用などさまざまな部分を検討した結果、クラウドではなく、自社内に専用システムを構築して運用する従来のオンプレミス型を取りつつ、システムの中身を刷新しようと考えています。27年の稼働を予定しています。

 瀧本とは業務連携の基盤ができました。生産の相互乗り入れも来期から始まる予定です。

――昨年から稼働する昇華転写工場の生産状況は。

 紅陽台物流センター(岡山県玉野市)に隣接する昇華転写工場は昇華転写プリンター13台、プレス機3台、自動裁断機(CAM)5台体制で、常にフル稼働の状況。昇華転写はまだまだ伸び代があり、将来的な設備の増設の余地もあります。

――23年から動く東京物流センター(茨城県笠間市)の状況について。

 1年目は東京都内、2年目には千葉、埼玉、神奈川と東京本社の商圏全体が対象となり、出荷個数が増えています。在庫金額はピーク時に前期の2・5倍になっています。アソートや個人刺しゅう、裾上げなどの件数も増加しており、岡山からもスタッフが応援に駆け付けました。

〈昭和時代の思い出/24時間働けますかの時代〉

 1984年にトンボへ入社した藤原さんの最初の配属地は東京だった。「今ほどシステムが進化していないので、とにかく残業が多かった」と振り返る。中でも思い出すのが、当時支店のあった四谷のビルの中で個人アソート作業をしていたこと。「4月1、2日とかになると寝る暇もないほどで、毎日段ボールにくるまって寝ていた」と苦笑する。「まさに“24時間働けますか”の時代だった」としつつ、「今はこんな時代に戻してはいけない」と付け加える。

【略歴】

 ふじわら・たつや 1984年テイコク(現トンボ)入社。2013年取締役、15年常務取締役、19年に瀧本の代表取締役社長に就任。22年9月22日付で現職