春季総合特集Ⅳ(3)/Topインタビュー/菅公学生服 社長 尾﨑 茂 氏/これからも国内生産重視/付加価値高いモノ作りを
2025年04月25日 (金曜日)
性的少数者(LGBTQ)への配慮から、制服を性差の感じられないブレザーへとMC(モデルチェンジ)する動きが中学校を中心に活発化している。菅公学生服ではこの動きに対応し、今春も安定的な生産、納品に努めた。今後は利益改善に向け価格改定に動くほか、鳥取県米子市の新工場の建設など、生産能力の増強にも着手する。
――主導国のないGゼロ時代に突入し先行きが不透明になる中、国内、海外で改めて強化していく取り組みは何でしょう。
当社の主力事業は学生服です。そのため、国内重視でずっとやってきており、今後も国内生産を拡充する方向へ進めていきます。
各国の国力も上がってきており、次はどこの国で縫うのだろうと思います。学生服はセット組みなどの作業もあり、単純に海外で作って輸入すれば良いというものでもありません。在庫のこともありますし、トータルで考えると国内で生産した方が良いのではないでしょうか。
とにかく安い所で、というビジネスモデルよりは、QRをやっていくしかないと考えています。Tシャツやポロシャツなど、海外で作っている製品はもちろんありますが、付加価値の高いモノは今後も国内でしっかりと作っていきます。
――ここ数年、MCの数が高水準にあります。今春の入学商戦はいかがでしたか。
おおむね順調に推移しました。来春に向けても学生服に関しては4月いっぱいで新規注文を締め切ります。社内の働き方改革という意味もあり、シーズンとはいえ大残業を良しとしないという姿勢がようやく形になってきました。
――価格改定の進捗(しんちょく)は。
営業部署の頑張りによって価格改定の活動が進んでいます。これによって、コンペで失権することもあるかもしれません。ただ、ちゃんとした製品をお届けするために、ある程度のコスト負担をお願いするのは仕方のないことだと考えています。
――通期(2025年7月期)の見通しについて。
増収の見通しです。利益面は前期に比べると大幅に増える見込みですが、早くまともな姿にしなければなりません。昨年は東京エリアの代理店業務を担っていた東京菅公学生服(東京都中央区)のほか、販売代理店の豊国商事(滋賀県長浜市)を子会社化しました。
入学シーズンも過ぎ、今後は備蓄期に入ってきます。営業情報を工場と一気通貫し、無駄なモノを作らないということが至上命題になってきます。在庫も計画的に圧縮していきます。
――シャツ生産を主力とする米子工場(鳥取県米子市)の隣接地に増設予定のブレザーやスラックスを生産する新工場の状況は。
7月に着工し、来年7月の竣工(しゅんこう)を計画しています。
――倉敷工場(岡山県倉敷市)の生産本部の建屋の建て替えも進めています。
6月には竣工式を行いたいです。1階がモノ作りのスペース、2階が事務所となる見込みです。パターンや仕様書の部署のほか、研究部署も入る予定です。
――営業から生産、物流までの情報一元化の進捗は。
上がってくる要望や不備を回収しながら構築していますが、大枠は出来上がりました。
――グループ会社のカンコーマナボネクト(岡山市)で取り組む、非認知能力(数値化が難しい個人の特性による能力)の育成など、人材育成やキャリア教育事業の概況は。
小学3~6年生を対象とした仕事体験イベント、「キッズビジネスパーク」を開くなど、さまざまな引き合いをもらいながら事業を進めています。今後も学校に刺さるカリキュラムを提案していきたいです。
――JEPLAN(ジェプラン、旧日本環境設計)と「制服・体操服の循環型プロジェクト」に取り組んでいます。
不要になった制服、体操服を学校で回収し、服から服へと循環させるものです。連携校も広がっており、50校以上と取り組みが進んでいます。
〈昭和時代の思い出/熱狂した昭和60年〉
1973年生まれの尾﨑さん。昭和を過ごしたのは幼~少年期で、「オイルショックなどもあったのだろうが、もちろん当時は分からない」。その上で、昭和の思い出について聞くと「昭和60年のことしか覚えていない」ときっぱり。その年はPL学園の桑田真澄と清原和博の“KKコンビ”が夏の甲子園で活躍した年だ。秋には阪神タイガースが38年ぶり、2リーグ制になっては初の日本一に輝いた。「中学受験に励みながら熱狂していた」と振り返る。
【略歴】
おざき・しげる 1998年尾崎商事(現・菅公学生服)入社。2001年取締役、03年専務。06年から社長