創刊75周年記念特集(6)/歴史を紡ぐ~ロングセラー商品~/昭和西川「ムアツ」/クラボウ「6070」/シキボウ「スーパーアニエール」シリーズ」

2025年04月28日 (月曜日)

〈昭和西川「ムアツ」/進化続ける良質の眠り/核心変えず半世紀超〉

 半世紀以上のロングセラーを誇る、昭和西川の「MuAtsu」(ムアツ)マットレス。健康寝具のパイオニアとして、常に最先端の睡眠科学を基に進化させ、家庭、宿泊施設、病院、高級夜行バスなど多方面に広がる。

 MD本部MD一部兼MD一部ムアツ課の橋本康資部長代理は、「今後50年、100年と続くムアツの歴史の中で自分は点のような存在だが、『人々に良質な眠りを』との先人の思いを次世代へ継承し、より多くの人にムアツを届けたい」と話す。

 誕生は1969年。床ずれを防ぐ体圧分散方法を考えていたところ、宇宙ロケットの突端のタマゴ形状に着想を得て、点で体を支える「クレーター状マットレス」を考案。翌年、臨床試験用に複数の病院で採用され、床ずれ防止に効果的と検証された。

 一般発売当時は綿ふとんが主流の時代。面ではなく、点で支えるウレタン製の画期的なマットレスとして注目された。その後もさまざまな改良を重ね、2001年には累計出荷台数300万台を突破。「点で支えるため血行を妨げにくく、理想的な寝姿勢を保持できる、寝返りしやすいことなどが支持されている」

 10年ほど前から商品開発やブランディングを加速。3層構造の「ムアツスリープスパ」投入に伴う刷新では、「寝心地の向上はもちろん、シンプルなデザインも好評」となり、15年には累計出荷400万台を超える。

 発売50年の節目には、医療現場で選ばれた原点に立ち返り“医寝同源”をコンセプトにした「ムアツプラス」を展開。本社ビル内に体験型ラボを設け、大学と共同開発した寝具測定機による一人一人に合った商品提案、睡眠のコンサルティングサービスを強化した。

 23年の全面刷新では、既存3ライン(ムアツ、ムアツスリープスパ、ムアツプラス)を統合・整理して、マットレスの種類を半減させ選びやすくしている。

 近年、寝具専門店やGMS、百貨店に加え、直営店、電子商取引(EC)と販路を拡大。直営店は「オーダーメード枕『まくらぼ』の併設で、メンテナンスなど来店頻度が高まり、ムアツ販売にも好影響」だ。自社オンラインショップでは過去2年で売上高が2倍に増加。正しくメンテナンスすることで約20年以上の使用を目指す、高品質な“20年ムアツ”シリーズがけん引した。

 8年前から、ムアツ販売のプロである「ムアツマイスター」の育成を開始し、認定者は現在600人に上る。

 今春、20年ムアツの品質・機能をグレードアップした“30年ムアツ”シリーズを軸に、再リニューアルした。4月には、最上位モデル「30年ムアツXX」に新商品“クラウド”を加えた。既存の“コンフォート”と合わせ、より上質な寝心地を追求。俳優の菜々緒さんを新CMキャラクターに起用し、若い女性層の開拓も図る。

 時代とともに進化するムアツだが、「凹凸構造の山であるタマゴ型の形状や深さ、一つ一つの山の距離感など、核心部分は変えていない」。ITが普及する前のこと。それらは全て担当者らが手計算で導き出した。

 ブランドの原点と核をぶらさず、良質な眠りを追求し続けるムアツ。今後はバイオマスウレタンの開発や、不要マットレスの回収・リサイクルなど、環境負荷軽減にも力を注ぐ。

1969年・「クレーター状マットレス」考案

1970年・床ずれ防止用として臨床試験実施・好結果得る

1971年・「アセスパット」として一般発売

1974年・「muatsuふとん」としてリニューアル発売

1980年・厚生労働省より病院用基準寝具の使用認可取得

2001年・累計出荷台数300万台達成

2014年・「muatsu sleep spa」誕生

2015年・累計出荷台数400万台達成

・マツコ・デラックスさんとCM契約

2021年・発売50周年

・「MuAtsu+」誕生

2023年・「MuAtsu」へ全面リニューアル

2025年・「30年MuAtsu」シリーズ登場

・菜々緒さんとCM契約

〈クラボウ「6070」/ワークウエア業界支える定番/仲間を作り成長へ〉

 クラボウのユニフォーム地の定番素材「6070」は、1960年代に登場した綿100%のウエストポイント生地で、防縮(サンフォライズ)加工を施したロングセラーだ。防縮加工を施していない「6170」をベースに開発された。

 単なる生地供給にとどまらず、69年には「クラボウ6070会」を結成。伊藤清産業(現アイトス)、ミドリ安全、タカヤ商事、飯島産業など10社が参加し、ユニフォームメーカーと連携した販売体制を構築した。丈夫で扱いやすい特性から、鉄鋼や造船、自動車といった主力産業に採用された。

 70年代に入り、カラーワーキングが全盛を迎えると、ポリエステル・綿の34双糸使いの制電糸入り「5055」を開発。アパレルや商社、全国約100社の販売代理店と連携する「ゼンロック会」を立ち上げ、市場開拓に取り組んだ。「ここで構築した流通チャネルが今も生きている」として、同社のユニフォーム事業の基盤を築いた。

 2000年代には、累計1千万点超のヒット(アイトス調べ)となる立体裁断パターン「ムービンカット」を投入した。「ネーミングやブランディングが認知度向上につながり、顧客との信頼構築に結び付いた」と分析している。

 6070は今も定番素材として現役。多様な素材が並ぶ中で支持され続ける背景には、“現場の声に応える素材開発”というクラボウの姿勢がある。

〈シキボウ「スーパーアニエール」シリーズ」/におい”の悩み 常に対応/時代の空気捉え存在感〉

 シキボウが展開する消臭加工素材「スーパーアニエール」シリーズが、時代の“におい”の悩みに対応しながらロングセラーとして進化を続けている。1990年に「アニエール」を発売。92年には当時としては画期的な酸性・アルカリ性の両臭気に対応した「スーパーアニエール」を開発し、高性能化を図った。洗濯10回後でも性能を保つ点が評価され、定番品となった。

 体臭やエイジングケアへの関心が高まる中、99年には加齢臭対応の「スーパーアニエール9」を投入。2015年にはマンダムと共同で、30~40代男性特有の「ミドル脂臭」の原因成分ジアセチルに効果を発揮する「スーパーアニエールM」を開発。菌が汗の乳酸を代謝して生じる不快臭に対応し、洗濯10回後も99%の消臭性能を維持した。

 近年は、尿漏れ臭に対応する「スーパーアニエールP」、資生堂が発見したストレス臭に対応する「スーパーアニエールS」を展開している。いずれも抗菌性と即効性を備え、洗濯後も8割以上の効果を保つ。

 臭いによる迷惑行為を指す「スメルハラスメント」が注目される中、同シリーズは時代の空気を捉えた機能加工素材として、今後も存在感を高めていく。