現地企業トップに聞く 転換期の香港 どう見る?(後)/東麗〈香港〉 舟橋輝郎社長
2025年04月30日 (水曜日)
高度人材生かし「3・0」へ
――東麗〈香港〉(THK)は東レの香港法人で、編み物製衣類の縫製を手掛けています。昨年度業績は。
過去5年間で最高だった2024年3月期からほぼ横ばいでした。総じて堅調でした。
――自社工場、THKアパレル(広東省珠海市)の稼働状況は。
フル稼働が続いています。日本向けがこれまで主力でしたが、中国の地場スポーツ向けを増やしています。これに伴い、生産アイテムも高度化しています。工員数は1千人強で、前年からほぼ横ばいです。
――山東省青島の合弁工場やベトナム、バングラの協力工場は。
こちらもフル稼働です。
――この5年間、THKの改革に注力されています。
「THK2・0」と銘打ち、自主性を持って新しい分野を開拓してきました。それが24年度に形になってきました。ボリュームではなく、価値を追求する仕掛けが実を結んでいます。
メインは樹脂接着縫製です。「Extraordinary」(並外れた)、「Emerging」(新しい)、「Premium」(上位の)の三つをコンセプトに約5年前から開発を本格化し、昨年量産を始めました。
――樹脂接着縫製とは。
樹脂をドット状に塗工し、縫製します。「縫製部分が伸びる」「製品を軽量化できる」「体に合わせて製品の形を丸くしたりできる」「縫製の自動化が可能」が利点です。これを「ACROFUSE」(アクロフューズ)ブランドとして、とがった欧米新興スポーツブランドに絞って提案しています。
――この目的は。
われわれの縫製の価値を高めるためです。ブラックボックスを作ることで、それを実現できます。東レは一貫型事業で世界一を目指しています。原料から生地まではブランド化できていますが、縫製はこれまで弱かった。そこを変えたいです。
――ところで、転換期の香港をどう見ますか。
人材を強みとした場所に生まれ変わろうとしています。人材を集め、資金を提供し、ベンチャーをどんどん作って行く方針です。外資が撤退する傾向が強まっていますが、本来であれば増やすべきです。
当社は香港の高度なIT人材を生かしています。地元の著名大学から優秀な人材をインターンシップで採用し、ベトナム生産を担当するITチームで活用しています。
「THK3・0」を今年度から始めます。(香港の高度人材を生かしながら)ODMの顧客に対し、バックヤード(商品開発や生産管理、サプライチェーン管理)のシステムを付加価値として提供するなど、新しい試みにチャレンジしていきます。
(香港=岩下祐一、おわり)