繊維ニュース

ユニフォーム/じわり胎動、海外に活路/国内需要頭打ち見据え

2025年04月30日 (水曜日)

 ユニフォーム業界で海外市場に活路を見いだそうという動きが目立ってきた。トランプ関税によって世界経済の先行き不透明感は高まるばかりだが、それ以上に国内需要の先細りに対する危機感の方が強い。グローバル化への礎を築くには目先の荒波にちゅうちょしている時間はなさそうだ。(甘利昌史)

 グローバルブランドへの脱皮を図るには、電子商取引(EC)を駆使した直販や、商社、販売代理店との提携で現地市場を直接切り開いていく必要がある。メディカルウエア製造卸のクラシコ(東京都港区)はこのほど、中国市場の開拓を本格化するため伊藤忠繊維貿易〈中国〉と販売に関する基本契約を締結した。これまでも同国最大のECモール「天猫」への出店や代理店を通じた販売には取り組んできたが、今回の協業によってより幅広い医療機関へのアプローチが可能になると意気込む。

 中国の医療現場では患者獲得のためにブランディングやサービス向上、人材採用に投資を行う病院が増えてきている。これらのニーズに応える日本発のデザイン、機能性を備えたウエアを投入することでチャンスを広げたい考えだ。海外開拓による成長戦略を描く同社は今冬、MNインターファッションとの資本業務提携も行っている。

 ワークマンは2028年に台湾への出店を計画している。当初はレディースカジュアルを中心とした業態を想定していたが、現在は「強みを生かした高機能、低価格な製品展開」というスタンスに転換。社内プロジェクトとして取り組むワークウエア強靭(きょうじん)化による成果も踏まえ、出店地に合わせたラインアップを探っていく。

 ボンマックス(東京都中央区)は昨年、タイの拠点として問屋機能を持つボンマックスタイランドを現地企業と同出資で設立。サービス、カジュアルウエアを中心とするユニフォーム備蓄の小口対応や日本のデザインと品質、さらには産地直接仕入れを強みとする。今期は日本文化をモチーフにした和デザインの刺しゅう風プリントTシャツなどで米国市場にも乗り出す計画だ。

 日本で進化を遂げた電動ファン(EF)付きウエアは国内需要が飽和状態に近付きつつある。その中で海外販路拡大の方針を打ち出す空調服(同板橋区)は今期、足掛かりとして7月開催の「はたらく現場の環境展」(大阪)と、11月の「A+A2025 国際労働安全衛生展」(独・デュッセルドルフ)に出展し、EFウエアの着用メリットを世界に向け発信していく。一方、欧州への進出も見据えており、CEマーキングをはじめ各国の認証取得に向けた準備を進めている。

 電動工具製造販売の京セラインダストリアルツールズ(広島県福山市)は昨年、ワークウエア製造卸のバートル(同府中市)と共同開発したEFウエアを東・東南アジアに投入。26年には米国にある京セラ傘下の機械工具販売店を皮切りに販路拡大を図る。

 海外展開には克服すべき課題が多い。進出先の文化、気候、ニーズに合わせた製品開発が重要なのは言うまでもなく、安定した物流体制の構築、各国の法規制への対応も求められる。不安定な為替動向は事業環境に最も大きな影響を及ぼしてくるだろう。それでも海外に打って出ることのメリットの方が勝るとの判断が広がり始めている。