繊維ニュース

新中計 収益力と資本効率の向上へ

2025年05月01日 (木曜日)

 2025年度に入り、繊維関連企業が続々と新たな中期経営計画(中計)を始動している。資本効率の改善と安定的な収益基盤の確立を軸に、独自技術の深化や成長分野への投資を強化する動きが広がる。

 素材メーカー各社はニッチ市場での高収益化を図る一方、サステイナビリティーへの対応や設備投資の拡大にも踏み出す(4面にアパレルメーカー、商社編)。

 合繊メーカーでは、旭化成が27年度に営業利益2700億円(24年度比約35%増)、ROE(自己資本利益率)で9・0%、ROIC(投下資本利益率)6・0%の達成を計画。繊維を含むコンフォートライフ事業はニッチで高収益な領域と位置付け、24年度214億円から27年度192億円へ減益を見込むが、安定的なキャッシュフロー創出に力を入れる。

 工藤幸四郎社長は「資本効率を高めることが中計の根幹。繊維でも利益貢献度は高い」と強調。ポリウレタン弾性糸「ロイカ」やキュプラ繊維「ベンベルグ」といった独自繊維製品の地位は維持する一方、大規模な投資拡大には慎重な姿勢を示す。

 紡績では、トーア紡コーポレーションが27年度に営業利益10億円(24年度比45・4%増)、ROE5・1%を計画。長井渡社長は「盤石な生産基盤の構築を進める」と述べ、設備投資に注力するため、ROEは24年度より下がる。衣料、インテリア産業資材の両事業を軸に、部門横断的な取り組みも活発化させる。

 シキボウは27年度に営業利益25億円(24年度比約92%増)、資本効率ではROE3・9%を目標に掲げる。繊維事業は、27年度に営業利益を9億5千万円(同約6倍)へ引き上げる。新中計では「成長への変革」を推進。尻家正博社長は「稼ぐ力の向上に重点を置く」と話し、サステへの対応力を強化しつつ、新たなビジネスの機会を着実に捉える。

 クラボウは14日の決算発表時に新中計の詳細を発表する予定だ。西垣伸二社長は「成長分野を確実に伸ばす」と述べ、繊維事業では「前中計の期間よりも設備投資額を増やす」方針。ROEでは30年にイノベーションと高収益を生み出す強い企業グループを見据える「長期ビジョン2030」で掲げていた8%(23年度6・2%)の前倒し達成を目指す。