オンワード樫山 気候変動に「通年商品」で挑戦
2025年05月02日 (金曜日)
オンワード樫山は、残暑や1カ月以上後ろ倒しになった寒い冬を想定した新たな商品MDを導入する。シーズンレスの通年商品を増やし、ニット製品や羽織り物を充実させる方針。昨年も残暑、暖冬対策で成果が表れていたが、もう一段ギアを上げる。
季節の移り変わりを夏と冬の「二季」と定義し、商品MDの周囲を固めるシーズンレスの服を増やす。既に一部のブランドで、4月から気温対策の商品を投入した。昨年は4月以降に気温が急上昇し、軽衣料の需要が拡大していた背景がある。
同社の山﨑圭子マーケティンググループ執行役員は「盛夏物に加え、その前後のアイテムが増える」と話す。通年商品の構成比については明言を避けたが、合繊素材のニットウエアやデニム商材、スエットなどさまざまなシーンで着用できる通年商品を拡充する。
その際、オンワード独自のデザイン性や機能など「当社の強みを掛け合わせた服を打ち出す」と述べた。この夏は機能性を付加しやすい合繊素材や冷房対策の羽織りアウターを提案するほか「(気温変動が大きい)秋物の稼働は短期集中になる」とした。
好調ブランドの婦人服「23区」、機能美を重視した次世代ブランド「アンフィーロ」でもニーズの変化を的確に捉えるため、MD改革を推進する。
23区は、長い夏を想定したサマーニットのバリエーションを拡充する。同ブランドを担当する佐野康博チーフMDは「サマーニットは前年比で約3倍を投入する。かなり踏み込んだ」と方針を説明。カーディガンやプルオーバー、スカートもニットで用意、透け感をポイントに大人女性の生活シーンを意識した。
アンフィーロではセットアップやニットウエア、さらに東レと共同開発した機能素材「ブリーズムーブ」を採用。同素材は高い通気性と吸水速乾性を備えており、ブラウス2型、ワンピース1型を展開する。
アンフィーロの山本洋輔チーフMDは「東レのブリーズクール糸を使い、オリジナル素材を共同開発した」とする。機能性を強みとした販促も同時進行し、分かりやすい訴求をウェブサイト上などで行う。
大手アパレルでシーズンレスを軸にMDを組むのは珍しいケースだが、一方で追随する企業も増えそうだ。競合他社もシンプルシックな通年商品が増えつつあり、販促を機にオンワード独自のデザイン性や機能、フィッティングなどを消費者に周知する考え。シーズンに左右されず長期間の販売もできるため、値引き販売の抑制にも期待感を示す。