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東レアクリル繊維事業 指標への登録急ぐ

2025年05月07日 (水曜日)

 東レの短繊維事業部はアクリル短繊維「トレロン」にバイオマス由来や廃棄プラスチック由来特性をマスバランス(MB)方式で割り当てた原料を導入している。既に量産体制の整備を終えており、現在は環境負荷削減値の算定や国際認証、評価指標への適合のための検証作業を進めている。急ぎ指標への登録を進め、取引先の理解を得られ次第、供給を本格的に開始する。

 MB方式は、製品の製造・加工・流通工程でバイオマス由来や廃棄プラスチック由来などの特性を持った原料と通常原料を混合使用する場合、特性を持った原料の投入量に応じて製品の一部に特性を割り当てる手法。MB方式導入により東レは廃棄プラスチック由来リサイクル原料やバイオマス由来原料による環境配慮型アクリル繊維の量産が可能になった。

 生産を担う愛媛工場(愛媛県松前町)では既にMB方式原料の使用に合わせた製造プラントの改造が完了しており、4月から量産体制が整った。現在、「国際持続可能カーボン認証」(ISCC)のバイオ原料とサーキュラー原料を対象とした認証制度「ISCCプラス」の基準に基づき、温室効果ガス(GHG)排出削減量など環境負荷削減値の算出・検証を進めている。

 具体的なデータがそろい次第、アパレル分野の国際的非営利団体であるカスケール(旧サステナブルアパレル連合)が定めるアパレル製品とサプライチェーンの持続可能性評価指標「Higgインデックス」にトレロンを登録するための申請手続きを進める。中島健太郎短繊維部長は「これら手続きの結果を理解していただいた取引先から順次、供給を本格化させる」と話す。

 同時にMB方式は通常のリサイクルやバイオマスの方式と異なり、原理の抽象度が高いため消費者に理解してもらう難易度も高い。このため「取引先と話し合い、具体的な表示など訴求方法を考えていきたい」と話す。こうした取り組みもMB方式による環境負荷低減型トレロンを普及させるためのポイントとなりそうだ。