新テキスタイル総合展(2)/高付加価値品で来場者迎える/東レ/STX/宇仁繊維/田村駒〉
2025年05月08日 (木曜日)
〈ブランドを前面に出す/東レ〉
東レは、企業・産地・学生まで包括的に参加するTTS展の趣旨に賛同し、人工皮革「ウルトラスエード」と独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」のブランドを前面に押し出す。
ウルトラスエードは定番のカラーバリエーションを紹介するほか、TTS展の前身であるPTJ展で出展企業のイチ押し素材「ワッツ・ネクスト」のコンテストで1位に選ばれたアルミ箔(はく)ボンディング加工を組み合わせた生地を紹介する。その上で今回のワッツ・ネクストとしてもユニークな生地を披露する予定だ。
ナノデザインを応用した生地は、和紙のような風合いと吸水速乾性が特徴の「カミフ」、フッ素系加工剤を使わず物理的特性で撥水(はっすい)機能を実現した「デューエイト」、開発から60周年を迎えた絹調素材「シルック」を進化させた「シルック美來」を紹介する。
デザイナー・田中崇順とパタンナー・松本志行によるブランド「ディウカ」とコラボレーションし、製品もウルトラスエードで2ルック、ナノデザインで3ルック制作した。
TTS展を通じ、企業だけでなく、学生に対しても日本と東レの素材の良さを認知してもらうことを目指す。
〈糸からの提案が強み/STX〉
STXは昨年11月のPTJ展に初出展し、新規取引先2件を獲得するなど早速成果を出した。今回のTTS展でも多様な糸を備蓄することによる差別化提案や短納期化を強みに販路拡大を狙う。
綿66%・ポリエステル34%のハイゲージニットサッカーは、柔らかさ、しなやかさがありつつストレッチの効いたサステイナブルな丸編み地。綿にはSTXオリジナルのGOTS認証取得インド産オーガニックコットン糸「コンフィル」を使用し、ポリエステルにはリサイクルの高捲縮(けんしゅく)タイプを使った。
綿100%のシアーフライスは、細番手の強撚糸を用いたシアー素材。強撚糸を使用することで爽やかなタッチを付与し、トレンドのシアー感を表現したイチ押し素材だ。
同社の強みは綿糸を中心に約100種類の糸を備蓄していることにある。サステ素材から機能性素材まで幅広い丸編み地を取りそろえる。
TTS出展に際し、「日本のモノ作りのレベルは非常に高く、まだまだグローバルな競争力はあると考える。そのメード・イン・ジャパンの生地を糸からの提案含め国内外に発信したい」とする。
〈高通気「エアコンフィー」/宇仁繊維〉
宇仁繊維(大阪市中央区)はJFW―JC、PTJ展に毎回継続出展することで国内顧客を開拓してきた。初開催のTTSでもこれまでと同様、新規顧客獲得、既存顧客の深掘りを狙う。
イチ押し素材の一つは、糸の細さの差と組織構造により生地に通気孔を作った、同社独自の新しい機能性ポリエステル素材「エアコンフィー」。通気性やストレッチ、撥水(はっすい)、ウオッシャブル性能を備えた多機能素材として打ち出す。
もう一つのイチ押しは、高密度な生地にポリウレタンを入れることで収縮性を持たせた意匠生地。高密度ながら肌離れに優れるため夏場を涼しく過ごせる。
同社はメード・イン・ジャパンにこだわったテキスタイルメーカーで、ポリエステルを中心とした合繊素材を得意とする。近年は合繊だけでなく綿やシルクなど天然繊維使いも増やしており、自社で保有する織機、子会社の染色加工場、協力工場との連携による小ロット・多品種・短納期機能が最大の強み。
「国産生地の魅力、モノ作りの力を来場者に訴え、新たな取引につなげたい」と意気込む。
〈機能性素材が充実/田村駒〉
田村駒の生地販売部門は2020年から計8回PTJ展に出展し、新規顧客の獲得を進めてきた。新品番の提案による商品認知の獲得としても有用と言う。
今回展のイチ押し商品は、ポリエステル長繊維を使いながら綿タッチを実現したツイル。ストレッチ糸や制電糸を使用しているため、どんなシーンにも対応する。単価もこなれており、目付け組織違いで複数品番展示する。
もう一つは、スポーツ・アウトドア用途からカジュアル用途まで幅広いシーンで使用できるナイロン・ポリウレタンのストレッチ素材。裏面を2重織りにしているため肌離れが良く、ナイロン特有の接触冷感性もあるため夏場にぴったりと言える。撥水(はっすい)加工も施しているため、少しの雨ならはじく。