東洋紡せんい 熱可塑複合材の第2弾
2025年05月09日 (金曜日)
東洋紡せんいは熱可塑性ガラス繊維複合紡績糸「GfC yarn」を開発した。2027年度からの本格販売を目指し、自動車部材や建材、各種補強材料向けに提案する。
27年度に売上高5億円を目指す。14~16日、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開催される「第5回サステナブルマテリアル展」の同社ブースで初披露する。
GfC yarnは衣料用3層構造紡績糸「フィラシス」など独自の複合紡績技術を応用し開発した。糸構造は昨年発表した熱可塑性炭素繊維複合紡績糸「CfC yarn」と同じだが、炭素繊維よりも安価なガラス繊維を使い、熱可塑性繊維にはポリプロピレンを組み合わせた。CfC yarnに比べ糸値が大幅に安くなり、CfC yarnほどの強度が不要な汎用(はんよう)分野を開拓する。
ガラス繊維複合材料(GFRP)の中間基材として、組みひもやUDシート、編み地に加工でき、球体やパイプ型など複雑な形状に対応可能。熱可塑性のため、長期保存や再成形ができ、生産性や環境負荷軽減にメリットがある。現在の主流である熱硬化性ガラス繊維複合材の代替を狙い、自動車部材や建材などの開拓を進める。
通常はガラスとポリプロピレンの組み合わせは含侵性に課題があったが、複合紡績糸によってクリアした。
同社は繊維事業で産業資材を強化しており、その一つが独自紡績技術を活用した熱可塑性炭素繊維・ガラス繊維複合紡績糸。ともに、芯部分の熱可塑性繊維を炭素繊維やガラス繊維で覆い、さらに熱可塑性繊維を鞘部分に配した上で、熱可塑性繊維が再度、糸全体をラップする特殊な構造からなる。この構造によって熱可塑性繊維の含侵性が高くなり、熱可塑性複合材料の課題であった樹脂含侵性の低さを解消。VF(繊維体積含有率)もコントロールできる。
CfC yarnではナイロン6使いのほか、ポリカーボネート使いも開発し、自動車・オートバイや航空宇宙、スポーツ関係で評価に入っており、26年度以降に本格採用を見込む。使用する熱可塑性繊維も耐熱性に優れたPPS(ポリフェニレンサルファイド)使いを技術確立済みであり、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の開発にも着手している。
なお、第5回サステナブルマテリアル展では炭素繊維、ガラス繊維による熱可塑性複合紡績糸のほか、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルによるナイロン6「ループロン」、粒状ポリエステルを使用した高機能不織布シート「エアークロス」、蓄熱性、抗菌性に優れた銅蒸着ポリエステル不織布「メタルギア」も出品する。