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東レ長繊維事業 特殊糸の比率高める

2025年05月09日 (金曜日)

 東レの長繊維事業部は、2025年度(26年3月期)の重点課題として商品ポートフォリオの改革を掲げる。ナイロン長繊維を中心に高付加価値な特殊糸の比率を一段と高める。

 そのために国内工場の一つである石川工場(石川県能美市)での設備改造にも着手した。

 長繊維事業の24年度商況は比較的堅調に推移したもようだ。ポリエステル長繊維とナイロン長繊維ともに販売数量こそ大きな伸びはなかったものの、利益面は大幅に改善したとみられる。特に高付加価値な特殊糸の販売量が増加していることが利益率の改善につながった。

 ただ、衣料用ナイロン長繊維に関しては需要構造の変化が一段と鮮明になった。特に汎用(はんよう)糸は海外品との競争が激化。加えてランジェリー・ファンデーションやパンティーストッキングなど汎用糸の販売を数量面で支えてきた用途は、近年のライフスタイルの変化で需要減退が著しく、今後も劇的な回復は難しいとみる。一方で特殊ポリマー使いや極細繊度糸、特殊断面糸など高付加価値な特殊糸はスポーツ・アウトドアや機能性衣料などの用途を中心に需要増大が続いている。

 事業環境の変化を受け、足立大輔長繊維事業部長は「衣料用ナイロン長繊維を中心に生産・販売体制の中身を変えていく必要がある」と強調し、商品ポートフォリオ改革を進める考えだ。そのために国内工場の生産体制変更に取り組む。

 これまでナイロン長繊維は主に石川工場が汎用糸の量産、愛知工場(名古屋市西区)が特殊糸の多品種・小ロット生産を担っているが、汎用糸の需要が減退する一方、需要拡大が続く特殊糸の生産スペースが極めてタイトになっている。このため石川工場の生産体制を変更し、汎用糸の生産能力を縮小しながら特殊糸の生産能力を増強する。既に設備改造に着手しており、新しい次期中期経営課題が始まる26年度から本格的に改革を実行する。

 生産体制の改革に合わせて「商流改革にも取り組み、これまで以上に“前に出る”」とし、長繊維事業部として特に海外市場でのマーケティングに力を入れる。国内外の展示会などにも積極的に出展し、サプライチェーン全体に東レの高付加価値な特殊糸を訴求する。需要家による原糸からの差別化戦略を後押しすることで糸需要の掘り起こしを進める考えだ。